35話 こんにちは、はじめまして♪

  35話 こんにちは、はじめまして♪


「狂気的にダセぇよなぁ、ほんと。中学二年生の暴走。ヤバすぎる情緒の錯綜(さくそう)。……マジで、勘弁してほしいぜ……もう、そういうのからは、とっくに卒業してんだっつーの……」


 ブツブツと本音を口にしてから、


「けど……それでも……これが俺の根源だから……この醜さ、この弱さが、俺の器……みっともなくて、無様で、やるせなくて、心底ウザくて、ゲロ吐きそうだが……けど、でも、だからこそ……俺は背負う……背負ってみせる! この地獄……この狂気……っ!!」


 グっと、顔をあげて、

 ナイアをにらみつける。


 その瞳に『覚悟を決めた者の炎』が宿る。


 すぅうっと大きく息を吸い、

 一度目を閉じてから、

 カっと開く。


 すると、先ほどまでの『すべての痛みを我慢しているような顔』から一転、


 『なんとも気持ちの悪い笑顔』を作り、

 ビシっと、

 とことんまでカッコつけた、

 極上の厨二ポーズで、





「こんにちは、はじめまして♪ ぼくちゃんは、本物の『聖なる死神』。この薄汚れた世界を、とびっきりの邪悪で照らす漆黒の輝きさ♪」





 『羞恥』ではなく『狂気』でもって、

 彼は、


 『本物のセイバーリッチ』を『まっとう』する。


 そうでなければ届かない世界があるから。

 そうでなければ何者にもなれないのが彼だから。


 『極端に尖ったキャラ』を貫く覚悟。

 全てを背負って、彼は、うたう。


 両手を広げて、天を仰ぎ、

 恍惚の表情で、


「汝等の死を愛しちゃう♪ 汝等の絶望を称えちゃう♪ 彷徨う魂を祝福しちゃおう♪ 終わりなき常闇に、安らかな終焉を与えちゃおう♪ さあ、詠おう。詠っちゃおう♪ 抗えぬ死と、狂える絶望に敬意を表し、たゆたう漆黒の杯を献じつつ♪ ――そう。ぼくちゃんは、聖なる死神セイバーリッチ。死の剣を背負い舞う漆黒の煌めきさ♪」


 コールを終えると、

 その背中に『死色の翼』が顕現した。


 絶華色(ぜっかしょく)の狂気――『死神の剣翼』。


 その圧倒的な加護により、

 セイバーリッチの全ステータスが大幅に強化される。


 これだけでは止まらない!

 セイバーリッチの真価はここから!


 荒ぶる厨二のポーズを決めて、


「悪鬼羅刹は表裏一体♪ ぼくちゃんは独り、無間地獄に立ち尽くす♪ どこまでも光を求めてさまよう旅人♪ ここは幾億の夜を越えて辿り着いた場所♪ さあ、詠おう。詠っちゃおう♪ 喝采はいらない♪ 賛美も不要♪ ぼくちゃんは、ただ、絶望を裂く一振りの剣であればいい♪ みたいな♪ 感じで♪」


 言葉がゆらめく。

 魂魄がまたたく。


「それでは、独善的な正義を執行しちゃおう♪ たゆたう血で穢れた杯を献じつつ♪ ――そう、ぼくちゃんは、ぼくちゃんこそが、聖なる死神セイバーリッチ♪」


 言葉が象(かたち)になっていく。

 息を吸って、心を込めて、魂を削り、




「満を持して、ヒーロー見参♪」




 コールの直後、背に顕現する!

 全部で十六本の翼!

 極まって輝く、最果ての後光!


 つまりは、『英雄の剣翼』!!!


「最強×最強♪ これぞ、文句なしの『ぼくがかんがえたさいきょう』の翼♪」


 重なり合った英雄と死神の剣翼。

 最恐のブレンド。

 決して折れない死華が舞う。


「さぁて、それでは、蹂躙を開始しちゃう♪ ぼくちゃんの翼は、枯れないメロディ♪ どうせ死ぬなら、踊らにゃそんそん♪ というわけで、さあ、終わらない死の底で、パラパラとか踊ってみたらいかが? 手拍子ぐらいはしてあげるよ♪ 気が向いたらね♪」


 ワケのわからん言葉で、世界をケムに巻く。

 これが、セイバーリッチお得意の『ファントムトーク』!!


 言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい不快だ!


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