27話 不死種の神級モンスター『刈り取っちゃう者』、出撃。

 27話 不死種の神級モンスター『刈り取っちゃう者』、出撃。


『こっちにきちゃダメだよ。

 こっちを選ぶのはキ〇ガイだけ!

 だから、絶対にダメだよ。

 絶対だからね!

 押すなよ!

 チラッ|д゜)』



 と書かれている扉を前にして、

 ゲンは、


「……やれやれ」


 首を横にふりながら、


「あまりにも安い挑発だ。そんな『程度の低いお約束』に、『生粋の功利主義者』であるこの俺様が乗るとでも? 残念ながら、俺は『体当たり型のエンターテイナー』じゃない。『クールでシャイなリアリスト』だ」


 言いながら、ゲンは、正規ルートの方へと進むが、

 扉の前で、ぴたりと足をとめ、


「……」


 数秒考えてから、


「いやいや」


 と、軽く首を横に振ってから、

 しかし、


「……」


 もう一度、ジットリとした無言の時間を過ごすと、

 ゲンは、渋い顔で、ボリボリと頭をかいて、


「……ったく、しょうがねぇなぁ、もぉおお! ……一回だけだぞっ」


 そうつぶやくと、

 正規ルートに背を向けて、



「ヤバそうだったら、すぐに逃げよう……」



 当然のように、『キ〇ガイホイホイ』の方に入ってしまった。

 この扉を前にして逃れられるキ〇ガイなど、本物のキチ〇イではないのだ!






 ――『キ〇ガイフロア』は、区切りのある一室ではなく、

 『精神と時〇部屋』のように、

 何もない真っ白な空間が永遠に広がっている感じだった。


「……」


 この空間の不穏さに、ゲンの肌がピリついた。

 イヤな予感がとまらない。

 ゾクっと背中に冷たい感覚が走った。


「……これは……ガチでヤバそうだな……」


 つぶやいたと同時、

 ゲンは引き返そうと、振り返るが、

 しかし、


「……げっ」


 扉は消えてなくなっていた。


「……う、うそぉん……」


 ブワっと、冷や汗が大量にあふれた。

 イヤな予感が膨らんでいく。

 ビリビリと肌が軋む。


 ――直後、



『――ぴんぽんぱんぽーん』



 電子音が響いた。

 ゆっくりボイスのような、抑揚に違和感がある声。


『禁止エリアへの侵入を確認。迎撃システム【刈り取っちゃう者】出撃準備開始』


「……おいおい、何をする気……」


 ゲンに戦慄する時間すら与えず、


『出撃準備完了。【刈り取っちゃう者】よ、自由を許可する。好きに暴れろ』


 宣言が終了したと同時、

 ゲンの眼前に、美しいジオメトリが出現した。


 そして、そのジオメトリの向こうから、


「……ぶはぁ」


 真っ黒なロングトレンチコートを着込んだ『のっぺらぼう(口あり)』が出現した。

 長身で、ガリガリで、肌の質感はボロボロ。

 その『のっべらぼう』――『刈り取っちゃう者』は、


「ぎひっ」


 裂けたような口をニィと弾ませて、


「ぎははははははははは!! マジか! 自由?! 好きにやっていいのか?! うれしぃいいいいいいい!!」


 狂ったように笑う『刈り取っちゃう者』を見て、

 ゲンは、根源的恐怖を覚えた。


「……おいおい……やべぇだろ、これ……」


「気づいたか? 気づいちゃったか?! そうさ、俺はやべぇ! 全モンスターの中で最も厄介な種族である『不死種』!! その中でも最高位の『神級』!!! 全宇宙最強の死神! 刈り取っちゃう者! 名前はふざけているが、だからこそ『エグい加速』を背負っている覚悟と狂気の結晶! ステータス最強! 属性最強! 魔法も最強! グリムアーツも最強! すべてが最強! 完全無敵の最強死神!! それがこの俺ぇぇぇ!!」


「神級だったら、最強じゃないだろ。モンスター階級の一番上って、確か、大神級だよな…………んー、なんだろう……威圧感は本物なのに……セリフと雰囲気が、すげぇ小物くせぇ……」

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