99回。

 99回。


「それでは、そろそろ失礼する。聖誕祭の栄典式がそろそろ始まるのでね。カドヒト捕縛の件については、また今度、話を聞かせてほしい」


 去っていくジャミの背中を見送りつつ、

 バンプティは、心の中で、


(……『主を信じない自由』……そんなものは必要ない……)


 信念を主軸とした暴論を展開していた。


(愚か者ども……自分たちの王すら知らぬマヌケ……あってはならぬ、そんなこと……)


 グツグツと、心の奥で、怒りが沸いてきた。


 先ほどの『ジャミの反応』は、

 『狂信者バンプティ』からすれば、

 許しておけない態度。


(自分が根源的に『誰によって支えられて生きている』のか……『その程度の基本的理解』も出来ておらぬ大バカ者……是正せねばならぬ……なんとしても……主の輝きを理解しようとしない者に、生きている価値はない)


 バンプティの中で、

 『ゆがんだ感情』が膨らんでいく。


 神への愛が、

 ヤンデレ方向へと開花していく。


 ――ゆえに、

 その『病(や)み系の萌芽』を糧として、

 バンプティの中で、

 『ヤツ』が力を取り戻す。




「……ぅぐっ」




 ビリィっと、全身がしびれた。

 弱さを持たない強引な電流。

 抵抗する余裕は与えてくれなかった。


「……ぁ……っ――」


 ほぼ一瞬で、

 バンプティの意識は途切れた。


 フラっと倒れそうになる体を、



「――……おっと……」



 『仮バグ』は、グっと支えて、


(……よし……同期、スタート……)


 心の中で、そう呟きながら、

 意識を巡らせて、


(……S099の裏イベントスイッチがONに切り替わっている……どうやら、スールの方の処理は問題なく終わったようだな。センエースがオレの方にくる気配は……ない。『いつもどおり』、バンプティは放置のスタイルでいくようだな)


 『自身の光を刻む』という形で『未来』を見せたため、

 バンプティに対する後処理はサクっとした記憶介入でも構わない。

 最悪、記憶の一部が残っていたとしても、

 これまでと大して変わらないし、

 なんなら、少しぐらい残っていた方が、

 今後の指針になりえるだろう。

 だが、反聖典側のスールだけは丁寧に処理をしておきたい。


 ……それが、センエースの考え方。


 センエースがそう考えて行動するということを、

 『仮バグ』は『経験』上、『知って』いる。


(何度もおんなじことをやっているんだから、当然、思考形態も行動パターンも全て読める……というか、99回以上、同じことをやっていながら、この程度のことも読めないとなれば、そいつは、真正のアホだ)


 まるで『自分に言い聞かせる』ように、

 丁寧に、『理解』を積んでいく『仮バグ』。



(データ量が多すぎて、バンプティが、オレを『完全』に取り戻すまで、このままだと、数年はかかる……意識回線にテコ入れは必須。ちゃんと理解しろよ、バンプティ。センエースが『真・第一アルファを攻略し、プライマル・コスモゾーン・レリックを入手するまで』には、確実に取り戻さないといけないんだからな)


 自分自身に言い聞かせることで、

 意識回線にテコ入れをしていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る