己の弱さを理解しろ。

 己の弱さを理解しろ。


「速攻で、解体してくれる! ふざけた無茶を通した空間魔法など、その気になれば、一瞬で解体――解体……っっ……な、なんだ、この強度は……ど、どうなっている……っっ!」



 全力で空間を消滅させようとあがくものの、

 閃世界にはヒビ一ついれることができなかった。


 『センエースにとって都合のいい空間』などという、

 明らかなオーバーフロー技を破壊するのは、本来であれば容易なはず。


 『究極超神化6』という大技に、

 『五分間完全集中必須』や『一分限定』などの制限があるように、


 『強力な能力』には『相応のデメリット』が対(つい)となる。

 それが世界の常識・ルール。


 この手の『圧倒的優位空間作成』の場合、

 『空間の強度が脆い』というのが世界の常例。


 ――なのに、


「面倒な『対策障壁神字』を組みやがって……あ、いや、それだけじゃなく、無数のアリア・ギアスまで組みこまれているな……ば、バカみたいに複雑なファイアウォールにしやがって……な、ならば、一時的閉鎖を……」


 あらゆる角度から、閃世界を終わらせようともがくが、

 しかし、


「な……なんだ、この複雑さ……ふざけっ……」


 閃世界は、バンスールの介入を許さない。

 迎撃システムが、侵入者を許さない鉄壁の守りでもって、空間の全てを防衛している。


 無駄なあがきをしているバンスールを尻目に、

 センは、


「無駄だよ。俺の空間に介入できるほど、お前は繊細じゃない」


「あぁ?!」


「今のお前は、コピーした力を振り回しているだけの憐(あわ)れな虫ケラ。ならば、当然、確定で不可能。俺がバカみたいに積んできた覚悟は『ポっと出の安っぽいバグ技』なんかに負けたりしねぇ。俺の魔法をナメるな。閃世界の脆さをカバーするために、俺がどれだけの地獄を積んできたと思う」


 知り合いの元最強神を数秒閉じ込めるために、

 必死になって積んできた固有世界。

 死ぬほど努力して、強度を上げてきたが、

 知り合いの元最強神は、桜華閃世界を8秒ほどで解体してしまう。


 ※ 詰将棋を想像してもらえれば、閃世界の解体が理解しやすいだろう。

   必死こいて創り上げた難問を、

   サクっと解かれてしまう悲しさたるや……


「いいかげん、己の弱さを理解しろよ、虫ケラ。俺の知り合いの『元最強神』なら、この程度の空間魔法は秒で解体できる。ガチでな。……そもそも、あいつの場合、なかなか閉じ込めさせてくれない。あいつの前で、究極超神化6を積むことは、限りなく不可能に近い苦行。あきらめが悪い俺だからこそ、何度か『成功したこと』もなくはないが、俺以外なら、確定で不可能。――そろそろ理解できたか? お前は、俺の前に立てるレベルに達していないってことに」


「……」


「さあ、それでは『お遊戯会』をはじめようか。ハッキリ言っておくが、今のお前では、俺の足元にも及ばない。アポロギスは確かに強いし、事実、かつては大いに苦戦した……が、今の俺なら、造作もなく勝てる。あの闘い以降に俺が積んできた『地獄の数千年』をナメるんじゃねぇ」


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