コピーにコピーを重ねるパクリ野郎。

 コピーにコピーを重ねるパクリ野郎。



「はっはぁああああ!! 超々々々々大当たりだぁああああああ!」


 叫ぶバンスール。

 歓喜の中で、


「――『サクリファイス・リーンカネーション』、発動ぉおおおお!! 刻印は『記憶模倣』! 貴様の記憶に刻まれた『最恐』をコピーするぅうう!」


 宣言すると、

 バンスールの存在値が、

 限界を超えて跳ね上がっていく。


 膨大な力。

 ありえないほどの高みへと昇っていく。


「ぷはぁ……」


 天を仰ぎ、息を吸う。



「はは……ははははははははははははははははははははははは!!!!!!」



 バンスールは、豪快な高笑いを決め込んでから、

 恍惚の表情で、


「どうだぁああ、カドヒトぉおおおお!! この高み! この異質!! ついに、オレはっ……オレは『本物』になったぁあああああ! 永遠を飲み込んだ邪悪!! 限界の向こう側の向こう側の向こう側ぁあああああああ!!」


「おお、すごい技だな。ガチで驚いたよ。まさか、俺の記憶にある『アポロギス』をコピーするとは……いやぁ、あらためて見ると、アポロギス、すげぇなぁ……当時の俺、よく倒せたなぁ……」


 つぶやきつつも、

 心の中で、


(いやぁ……しかし、コピーにコピーを重ねているだけのパクリ野郎が『本物になった』などという大層な言葉を使うとは……ギャグが上品すぎて、逆に笑えないレベルだぜ)


 などと思っていると、


 ――『本物になったバンスール』は、

 何度か深呼吸をしてから、

 ニィっと黒く微笑んで、


「貴様の戦闘力がいかに高かろうと、もはや、これまでだ。今のオレは極限の向こうにいる。すべての神を超越した、究極の邪悪。もはや、自分で自分がさっぱり理解できない領域。だが、これだけは分かる。オレは無上。最強という概念の具現」


「確かに、お前の『数字』は異常な領域に達しているな」


 うんうんと頷いてから、

 カドヒトは、


「アポロギス×バンスールという狂気……それが、どの程度の高みなのか、しかと、この身で味わわせてもらおう」


 ニィと黒く笑い、


「ただ、まあ、『俺の望み通り』に『リミット』まで届いてくれたお前を相手するのに、存在値170のままってのは、さすがに体裁が悪すぎるな。狂気には狂気で返す。それが礼儀」


 などと言ってから、

 カドヒトは、


「特別に見せてやるよ、俺の……『リミット』を――」


 グっと腹の底に力をこめる。


 すると、



 ――パァンッッ!!



 と、

 カドヒトの肉体が、

 まるで風船みたいに、弾けて飛んだ。


 と、同時、

 カドヒトが立っていた場所に、



 ――『小さな太陽』が出現した。



 そして、その小さな太陽の上には、

 目を閉じて座禅を組んでいる男が一人。




 頭上に天輪を浮かべ、

 背中に剣の翼を携えて、

 瀟洒な長羽織を羽織った男。




 もはや、隠せない。

 彼こそが、この上なく尊き神の王、

 究極超神センエース。


 ――センは、ゆっくりと目を開けると、

 小さな太陽から腰を下ろし、



「すぅ……はぁ……」


 どこか遠くを見つめながら、

 無我の極地で、ゆっくりと深呼吸をする。


 今、この瞬間だけではない。

 彼は、ずっと、極地の最果てで瞑想していた。


 『仮バグが登場した瞬間』から『現在』に至るまでの時間、

 ――およそ、52分。


 その時間の全てを、

 センエースは、

 『完全集中』に使った。


 『人格』と『戦闘力の一割』を込めることができる『ミガワリヤドリギ』という究極超神器に『場』を任せ、裏では、せっせと完全集中時間を稼いでいた。


 『ミガワリヤドリギ(カドヒト)』はオートで動かせるが、

 しかし、アイテム使用時のリンクを切ることは出来ないゆえ、

 真の『完全集中』を実現することは不可能。


 結果、10倍の時間を必要とした。


 50分の完全集中。

 普通なら、稼げるわけがない時間。

 しかし、センは稼いでみせた。


 ゆえに、可能となる。

 果て無き神の姿に成ることが。






「――『究極超神化6』――」






 そう宣言すると、

 センの全身を、神々しい輝きが包み込む。


 グンと、のびやかに、

 ズンと、メタリックな重厚感を感じさせつつ、

 厳かに、うたうように、踊るように、

 オーラと魔力が閃光の旋律を刻む。


 その旋律を受けて、バンスールは、


「ぅ……ぁ……」


 思わず一歩、後退(あとじ)さってしまった。


 『存在値で言えば、自分の方が上だ』と、

 魂魄では理解できているのに、

 体の反応を制御できなかった。


 バンスールの視線の先で、

 センの輝きはさらに加速していく。


 ――究極超神化6。

 尊き『神』の最果て。

 数多の絶望を乗り越え、

 神の限界を超え、

 さらに、その先へ、先へ、先へ、


 そうして、たどり着いた、真なる究極の最果て。





 ――フォルムは、

 『スピリットプラチナ・フォルテシモ』。

 全ステータスが高性能で、かつ、強烈に高いクリティカル率&クリティカルヒットダメージが特徴的なスタイル。


 『全部で5つあるスタイル』の中でも、特に汎用性が高い姿。


 万能性を追求した至高の究極覚醒技。

 『究極超神化6/スピリットプラチナ・フォルテシモ』

 この輝きこそが、本物の無上。


 白金に、淡い金をちりばめた、凍てつくような輝き。

 冷たいけれど、どこか柔らか。

 まるで、泡で出来た羽のような光が、荘厳に、穏やかにまたたく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る