過去と未来を繋ぐ、たった一つの希望。

『前書き』

「センエースwiki」というサイトが公開されました。

そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。

「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*)

未公開情報も、山ほど掲載されております!



 過去と未来を繋ぐ、たった一つの希望。


「どこまでも光を求めてさまよう旅人。ここは幾億の夜を越えて辿り着いた場所。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。喝采はいらない。賛美も不要。俺は、ただ、絶望を裂く一振りの剣であればいい」



「……なんのポエムだ?」



 ザコーが、最大級に警戒しながら声をかけると、

 ルースは、右手を天に掲げた。


 その奇妙な動きをうけて、ザコーは、


「っ?!」


 当然、腰を落として、いつでも動けるように関節を調律する。


 そんなザコーの視線の先で、

 ルースが、




「――ヒーロー見参――」




 その言葉を口にすると、

 ルースの手の中に、

 とてつもなく深い光が収束していく。

 そのまばゆい光は、おだやかに、静かに、優しく、結晶化していく。


 ピンポン玉サイズの輝く玉になった光。

 ルースは、それを、ザコーに差し出しながら、




「受けとれ、ザコー。『ヒント2』だ」




「ヒント2……ねぇ」


 つぶやきつつ、舌打ちを挟んでから、


「お前、あの『ナイア』とかいう壊れたガキの知り合いか?」


「少し違う」


「……ああ、そう」


 そう言いながら、

 ザコーは、警戒心をMAXにしたまま、

 しかし、ゆっくりと、ルースのもとに近づき、


「お前は誰だ?」


「想いの結晶。不完全な虚構。過去と未来を繋ぐ、たった一つの希望。最後の砦。英雄を愛した影」


「すさまじく抽象的だな。まさか、それで理解できるとは思っていないよな?」


 そんなザコーの疑問を置き去りにして、

 ルースは、光のピンポン球を、さらにズイっと差し出して、


「受け取れ、ザコー。『ヒント2』だ」


「そして、無限ループか。こわいねぇ」


 戯言を口にするザコーに、

 ルースは、感情の向こう側にある表情で、

 どこか神妙に、


「俺にできるのはここまでなんだ。さっさと受け取ってくれ」


 冗談のテンションではなかった。

 重たいシリアスのまま、

 まっすぐにザコーの目を見るルース。


 当然、ザコーは、


「……一から十まで、意味が、さっぱりわからねぇ……」


 あたりまえの疑問を口にする。

 まっとうな疑問の中で、わずかに迷いながら、

 しかし、ザコーは、


「わからねぇが……」


 ルースの瞳から『強い想い』を感じ取ってしまったため、


「……まあ、いいか。迷ってばっかりじゃ、一歩も前にすすめねぇ。現状維持は、俺が望む場所から最も遠い怠惰」


 そう言いながら、

 ザコーは、

 ルースから、光の球を受け取った。


 すると、


「っっ?!! ぐぅう……っ!!!」


 頭の中に、多くの『シーン』が映し出される。

 不鮮明で、けれど『輪郭だけはハッキリしている奇妙な映像』が、

 ザコーの脳裏を、縦横無尽に駆け抜ける。


「これは……記憶……? なんの……誰の……」


 視点が不安定で、

 ところどころ、モザイクのような霞がかかっていて、


「カドヒト……イッツガイ……」


 ふいに、頭の中で、そんな名前が浮かんだ。


 門(かど)

  人(ひと)

   壱(いつ)

    番(つがい)


「……反……聖典……」


 概念と想いが流れこんでくる。


「……バンプティ……」


 また、誰かの名前が浮かぶ。


 ゼノリカの天上九華十傑の第十席序列二位『バンプティ』。


 理解はできない。

 何もわからない。


 ただ、妙に厚みのある輪郭だけが、

 ザコーの脳内を埋め尽くす。


「これは、記憶ではなく……『今の投射』……いや、今の投射でありながら……記憶でもある記録……なんだ、これ……どういう……」


 ザコーの疑問に、

 ルースが答える。


「理解は必要ない。お前はただの座標」


「……わけ……わかんねぇ……どうしたいんだよ……なにをさせたい……」


「いつか、全部わかるよ。きっと」


「……ぁ……」


 そこで、ザコーの意識は飛んだ。


 無意識の中で、けれど、視覚情報だけは、つらつらと流れていく。

 あまりにも奇妙な体験。


 ゆっくりと、

 ゆらゆらと、


 前提が整っていく。




『いや、センエースって、お前らが言うようなヤツじゃないから。ただのクソボッチだから。イカれた欲望に溺れまくっているだけのド変態だから。過剰に崇めるの、マジでやめろ。気持ち悪い! みろ、この鳥肌を! これ以上、俺の交感神経に嫌がらせをするのはやめろ! 俺が、かわいそうだろう! このバカどもがぁ!』




 頭の中をスルスルと流れていく言葉。

 その言葉に対して感じる、奇妙なほどの暖かさ。


 ザコーは、無意識の中で、



「……たった一つの希望……最後の砦……」



 ボソっと、そうつぶやいた。

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