あれと同じクラスになるの、やだなぁ……

 あれと同じクラスになるの、やだなぁ……


「マイナス点は色々つきましたがぁぁああああ! 『絶世美女の下男ポイント』が8億点つきますので、合格でございまぁぁぁぁああああああああす!!」


 腹の底から声を出す。

 満足のいく解答を得ると、

 ヤマトは、満面の笑みで、


「だよねぇ。だと思ったぁ」


 そう言って、ナイフをおさめた。


「それじゃあ、ゲンくん。先に進もうかぁ」


「ぁ……はい」


 ついさっきまで『ボーレの身勝手ぶり』に呆れていたゲンだったが、

 今は、そんなことすっかり忘れて、ただただ『ヤマトの狂気』に震えている。


 人間の感情とは、かくも乱高下するものなのか、

 と、人類の神秘を感じつつ、

 ゲンは、ロコ&ヤマトと共に、扉を抜けて、6階へと進んでいった。


 ゲンたち一向が去ったあと、

 ボーレは一息ついてから、


「やべぇ女だったなぁ……あれは完全に壊れている……もはや人間じゃないレベル……」


 溜息をつきつつ、


「今年から、あれと同じクラスになるのかぁ……やだなぁ……」


 天を仰ぎ、


「落ちてくれたら助かるんだけど……今年の試験で、あの女が落ちるって、ありえないんだよなぁ」


 今年の試験は、比較的『難易度が高い方』ではあるが、

 観察力・洞察力・戦闘能力の三つが一定基準を超えていれば、

 運に左右されることなく、ほぼ間違いなく受かるようになっている。

 というわけで、ヤマトが落ちる理由はない。


「……やだなぁ……」


 何度目かわからない深いため息をつくボーレ。


 彼がここまで落ち込んでいる理由は以下の通り。


 まず、全宮学園Sクラスは、15年制であるが、

 Sクラスになった者は、学年関係なく全員がクラスメートとなり、

 毎週、5コマほどある総合演習の科目では、

 学年関係なくSクラス全員で演習を行う。


 『学年ごとの必修』が毎週10コマあって、

 それだけは確定で別になるが、

 そのほかの講義は選択制であり、

 『各論系』や『応用演習系』で、低学年と一緒になることは少ないが、

 『概論・総論系』や『基礎演習系』を選んだ場合、一年と一緒になることもままある。


「……総合演習は仕方ないにしても、基礎系の選択科目は、絶対に、あの女とかぶらないようにしないと……」


 心の中でかたく決意していると、

 ボーレは、そこで、次の来訪者の気配を感じて、



「おっと……仕事、仕事……最低限の仕事はこなしておかないと、ルル様に怒られる……」



 『選別に関する裁量権』は与えられているが、

 『仕事を適当にしてもいい』という『特権』を与えられているわけではない。


 よって、ボーレは背筋を伸ばし、

 新たな受験生と対峙する。


「こんにちは。俺は、全宮学園Sクラス3年生のボーレ。試験官の一人です。よろしくおねがいします」


 その挨拶を受けると、

 受験生『ザコー』は、


「それ、ここを通るやつ全員に言うつもりか? 大変だな」


 けだるげな表情と声音でそう言った。


「ご心配なく、今回の試験で、この5階層まで降りてこられる者の数は、多く見積もっても10名ほどだと思われますので、さほど大した労力ではありません」

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