痛めつける、

 痛めつける、


「子供をいたぶる……非常に醜い。こういう『ただ醜いだけの雑味』って、ほんとに嫌いなんですよぉ」


 まったく内容のない言葉を吐いてから、


「今回は『全宮ロコとやってみたい』とつい思っていしまったので、ものはためしとばかりに依頼を受けてみましたが……さすがに、時期尚早すぎましたねぇ。いや、まあ『そうじゃないかなぁ』とは思っていたんですけどねぇ。さすがに五歳は若すぎるってぇ。けど、まあ、でも、期待はしちゃうじゃないですかぁ。『家族を相手に異常行動をとり続ける変態』との闘い。もしかしたら、トリッキーで面白いんじゃないかって、思っても仕方ないじゃないですかぁ」


 言いながら、ヤマトは、

 ロコの腹部に拳をぶちこむ。


「うぅううう!」


「期待外れとは言いませんよぉ。年齢を考えれば、あなたは素晴らしい実力をお持ちだぁ。そして、間違いなく、とんでもない才能の持ち主。さすがは全宮家の御令嬢。そこらのガキとはワケが違ぁう」


 言いながら、ヤマトはさらに、

 ロコの足を踏みつける。


「うぃいいいいい!!」


「まあ、いろいろ言いましたが、結局のところ、私が言いたいのは、私を恨むのではなく、お兄さんを恨んでくださいねぇってことですよぉ。私の手が殺すわけですが、私はあくまでも銃。引き金を引いたのは、あなたのお兄さん。その辺のご理解、よろしくでぇす」


 と、そこで、ヤマトは、

 ロコの口から布を抜いて、


「魔法を使いそうになったら、また口を封じますので、やめてくださいねぇ」


 そう前を置いてから、


「そろそろ、もう十分に『痛めつけろ』の依頼内容は果たしたかなぁと思いますので、そろそろ殺させていただきまぁす。……というワケで、何か最後に言い残したいことはありますかぁ?」


 そこで、ロコは、痛みに耐えつつ、

 恐怖や不安といった弱さの感情を押し殺し、

 キっと、表情を高貴に整えて、


「子供をいたぶるのが嫌いというわりには……躊躇なく、ボコボコにしてくれたわね」


「相手がただの子供だった場合、もう少し躊躇したと思いますが、あなたは、なかなか強いですし、今も、こうして、しっかりとした『強者の目』で私を見ていますぅ。だから、躊躇なく暴力をふるうことができましたぁ。助かりましたよぉ」


「……『強くならなければ』と『弱い自分』にムチ打ちながら、必死に、今日まで、どうにかこうにか、歯を食いしばって生きてきて……その結果、今、とても悲惨な目にあっているというわけか……人生というのは、本当にふざけているわね」


「でも、そういうところが最高に面白いですよねぇ」


 ニコニコと感情のない笑顔でそう言うと、

 ヤマトは、


「ところで、言い残したことは以上ですかぁ? 別に、時間が差し迫っているというわけでもないので、まだまだ言い足りないというのであれば、もうしばらくは、おしゃべりに付き合いますがぁ?」


 その問いかけを受けて、

 ロコは数秒悩んでから、


「そうね……じゃあ、もうしばらく付き合ってもらおうかしら」


 そう言ってから、

 顎をあげて、

 まっすぐにヤマトの目を見て、




「あたしの配下にならない?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る