喜ぶがいい、貴様のような下級戦士が超エリートに遊んでもらえるんだからな。

喜ぶがいい、貴様のような下級戦士が超エリートに遊んでもらえるんだからな。


「貴様の代わりはそうそういない……貴様は非常に優秀な人材だ……しかし……」


 そこで、アギトは、アイテムボックスから剣を抜いて、

 その切っ先をダギーのノドに向けて、


「だからといって、何をしても許されるわけではない!!」


 正論をつきつけられて、

 だから、ダギーは、

 まっすぐにアギトの目を見て、



「では、どうすればよかったのでしょうか」



 いっさいブレのない声で、

 まっすぐに、言葉を届けた。


「あぁ?!」


 怒りのままに声を出すアギトに、

 ダギーは、冷静に、


「あのまま続けていたとしたら、今も拷問は続いていたでしょう。不毛な時間が延々に続くのです。アレは決して折れない。一時間、十時間、一日、十日、一か月、半年、一年……それだけの時間をかけたとしても、アレは降参を口にしないでしょう。私は、その無意味な時間を積めばよかったのでしょうか? 決してゴールのない拷問を、アホウのように、時間を忘れて、永遠に続ければよかったのでしょうか?」


 事実を述べていく。

 ダギーの中にも正論はある。

 正論を持っているのはアギトだけじゃない。


 アギトは、


「……」


 ダギーの言葉を、いったん飲み込んでから、


「……最初から疑問だったのだが……」


 少しだけ冷静になった声で、


「ほんの数分しか戦っていないのに……なぜ『あのガキが一年をかけても折れない』ということがわかる? 先のぶつかり合いで、あのガキは確かに、悪くない根性を見せていた。それは認める。しかし――」


 アギトの言葉を最後まで聞かずに、

 ダギーは、まるで『挑発』するように、


「キチンと武を交わし合えば理解できます。あのガキの魂魄に『無理解』を示すのは極まった無能だけ。私は、無能ではありません。きわめて優秀で忠実な、あなた様の剣」


 ハッキリと、そう言い切った。


 ――『その強い発言』を受けて、

 アギトは、グっと奥歯をかみしめ、

 『血走った目』で『ダギーの眼球』を射貫くように、

 強く、強く、にらみつけてから、


「……いいだろう」


 そう言うと、

 剣をアイテムボックスにしまってから、


「では、私も、武をかわしあって確かめてみるコトとしよう……」


 ふつふつと沸き上がってくる怒りを、

 どうにか理性でコントロールしながら、


「ただし、覚えておけ。もし、私が、あのガキから降参を引き出すことに成功したら……貴様には相応の罰を与える」


「もちろんでございます」


「忘れるなよ、その言葉」


 そう言って、

 アギトは、ダギーの横を抜けて、

 ゆっくりとした歩みで、ゲンに近づいていく。


 ゲン・フォースと全宮アギト。

 『互いが手を伸ばせば触れられる距離』までくると、

 アギトは、ゲンの目をジっと見つめ、


「己が幸運に感謝しろ。……というより、ここはあえて『貴様の運命力だけは認めざるをえない』と言っておこうか。下層の一般人がこの私と武を交わせる機会などそうそういない」


 言いながら、アギトは全身をオーラで包み込んでいく。

 ハンパではない威圧感。

 ダギーが小動物に思えるほどの圧倒的な気配。


「……」


 さすがのゲンも、冷や汗を流す。

 気を抜けばゲロってしまいそうなほどの過度な精神的ストレス。

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