結局のところ、勝つしかない闘い。

 結局のところ、勝つしかない闘い。


「ここで勝てば、あなたの人生は変わる。大金だけあっても意味はないけれど、大金を抱かなければ見えない景色もある。だから……がんばりなさい」


 試すような笑顔でそんなことを言うロコ。


 その言葉を受けたゲンは、


(200億……それだけあれば、闇市で『それなりのアイテム』を購入できる……99%割引券もあわせれば……2兆円クラスのスーパーアイテムにも手が届く……)


 未来を演算する。

 ゲンの頭が豪速で回転する。


(闇市のアイテムが『どれだけの性能』なのか、その詳細は、現時点だと、さっぱりわからない……が、もし、値段に見合うだけの能力を有しているとすれば、そのスペックは、きっと破格……)


 現状の分析を経て、


(現状のロコを守るには、その『破格』が必要不可欠だと判断する)


 だからこそ、『未来に対する不安』が膨らんでいく。


(……『ロコのヤバさ』をナメていた……あの女、ヤバい……ヤバすぎる……自殺願望でもあるんじゃねぇかってくらい、怒らせちゃいけないヤツを煽りに煽る……ゆえに、早急に必要。ロコを守る剣。ソレがなければ、近いうちに、ロコは『家族』に殺される……)


 だから、


(勝つしかない……買って、金を手に入れる……そして、ロコを守れる力を買う……)


 ギリっと奥歯をかみしめる。

 すべてがアヤフヤというか、

 行き当たりばったりが過ぎるプラン。


 まるで『大きなうねり』の中で、無様にもがいているよう。

 嵐の中の小舟。

 ゲンの頭は、色々ありすぎて、普通にバグってきている。


 それでも、

 『自分にとって何が大事なのか』だけは見失っていない。


(……『勝負の内容』は俺が決められる……)


 トイメンにいるダギーに視線を送り、


(……とはいっても『武を交わす』のが絶対前提……となれば『まとも』にやれば、俺に勝ち目は万が一にもない……)


 先ほど『ダギーからかけられたチョッカイ』を、ゲンはハッキリと覚えている。

 どうあがいても、今のゲンでは勝てる気がしない。


 ――と、そこで、

 ダギーが、


「勝てば200億円以上のアガリか……すごいねぇ……くくく」


 薄く微笑みながら、


「私の生涯賃金は、定年までマックスで働けたとしても、15億にとどくかどうかってところだ。私が一生をかけて稼ぐ金……その十倍以上を、たった一度の闘いで稼げるとは……すごい運命をお持ちだねぇ。さすが、ソウルの息子。チャンスにも才能も恵まれて、言う事なしだねぇ」


 つらつらと、言葉を並べてから、


「ま、でも、人生ってのは、なかなか思った通りにいかないものでな……」


 ギンと瞳に力を込めて、


「そして、たいがいの場合『順風満帆』を邪魔してくるのは『人の悪意』と相場が決まっている。さて、少年……お前は、私の悪意をはねのけて、見事、200億以上という大金を手に入れることができるかな?」


 オーラと魔力を練り上げるダギー。

 ハッキリと数値で理解することは出来ないが、

 雰囲気だけでも、『絶対に無理だ』と分かる。

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