小気味いいでしょうね。

 小気味いいでしょうね。


「実数値よりも資質で判断していただきたい! あと熱量! 見てください、この気迫を! こりゃ、ハンパじゃありませんぜ、旦那。近衛に必要なのはこのギラギラとほとばしるやる気でしょう! 常識的に考えて!」


「近衛にやる気など必要ない。そもそも闘いにいくわけでもない。我々はあくまでも儀仗兵というか、ある種の権威付けというか――」


「だったら、むしろ、俺こそがふさわしいでしょう! むさいオッサンを引き連れていくよりも、俺の方が、こう……なんというか、マスコット的なアレでいい感じでしょう!」


 自身の発言に対して、だいぶ複雑な気分になったが、

 今は感情よりも実を取らなければいけない場面。


 よって、ゲンは追撃の手をやめず、


「おそらく、大人の皆さまは、ロコ様のパシリ的なアレをするのは、プライド的な意味で、いろいろとアレでしょう! というわけで、俺がロコ様のお世話係という感じのソレでいきます! はい、決定!」


「勝手に決定を下すな。というか、さっきも言ったように、近衛として参加させるには、ロコ様の許可がいる。私も多少は信頼されているから、私が選んだ者に対してロコ様がケチをつけてくることはないだろう……というか、今までは、一度も、そのようなことはなかった――が、しかし、名簿の一覧に『お前の名前』があったら、さすがに『ちょっと待て』となるだろう」


「なにを言っているのですか、お父様……そこからが、そこからこそが、お父様の出番ではないですか。いかに俺が『つかえるコマであるか』をロコ様にコンコンと説きふせるのが、今回のミッションにおけるお父様の最大にして最上の――」


「あのなぁ、ゲン……」


 ソウルさんは深いため息をついてから、


「何度でも言おう。お前は天才だ。近い将来、お前は毒組のトップとして、ロコ様に仕えるだろう。私はお前を誇りに思う。お前というケタ違いの天才が息子で非常に鼻が高い。それは間違いない」


 父親らしく、幼い子供のワガママに対し、


「だが、今のお前はまだ子供だ。仮に、お前を連れていったりしたら、ロコ様がどう思われるか想像してみろ。ロコ様がナメられるとか、バカにされるとか……それで済めば、まだいい方だ。最悪の場合、神聖な家族会議を愚弄したと判断され厳重な処罰を受ける可能性だってあるのだぞ」


 コンコンと説き伏せる。

 そんな父の目を、ゲンはジっと見つめている。


 ――ソウルさんは続けて、


「ただでさえ、ロコ様は微妙な立ち位置におられるというのに、ますます風当たりがきつくなったらどうする。その責任をお前は――」


「小気味いいでしょうね」


「はぁ?」


「俺を見下した連中は、将来、必ず思い知る。自分たちの目がいかに節穴であったか」


「……」


「ロコ様には、俺が今言ったようにお伝えください。それでダメなら諦めます。というか……『全宮ロコの器』が『俺の安い挑発も受け止められない程度』なら、俺が剣になる価値はない」


 ゲンの発言を受けて、

 ソウルさんは、数秒悩んでから、


「……メッセージは伝えよう。結果がどうなるかはわからないが……」


「ありがとうございます、ソウルさん」


「お父さんと呼びなさい」


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