反社VS反社。

反社VS反社。


 シアロリのエリアB支部は、100人ほどのテロリストに襲撃されていた。


 『異常集団ギルティブラッド』VS『完全院家をバッグに持つ極道シロアリ』。


 社会悪どもの泥試合。

 反社同士の無意味な抗争。


 ――『毒組専用パトカー』でシロアリのエリアB支部へと向かう途中、


「バカバカしい……せっかくゴミ共がつぶし合ってくれているんだから、暖かい目で見守っていればいいだろう。なんで、シロアリを助けにゃならんのだ。……『片方が全滅したタイミングで残りをつぶす』――そういう仕事だったら喜んでやってやる」


 副長であるヒジカが、面倒くさそうにそう言ったのを受けて、

 ソウルさんが、


「われわれは全宮ロコ様直属の部隊。ゆえに、『全宮家』が受けた『完全院からの依頼』を無碍に扱うワケにはいかない。今、この瞬間の私たちは、シロアリを守る盾であり剣」


 そう言いつつ、


「とはいえ、クズどものために命を張る必要はない。仕事として――『報告書に記載する数字』のために、何人かは守ってもらいたいところが……決して、命を張ってまで、守ろうとはするな。これは命令だ」


「言われるまでもねぇ。俺は市民を守るお巡りさんであって、ヤクザの犬じゃねぇ」


 ヒジカは、毒組の副長であることに誇りを持っている。

 彼だけではなく、毒組に所属している者は、皆が皆、

 自分は市民を守る剣であるという信念がある。


 だから、本当なら、このような仕事はしたくない。

 だが、信念だけを貫けるほど、この世界は成熟していない。


「報告用の数字は『5』もあれば十分でしょう。出来るだけ『無害そうなカス』だけ残して、あとのカスには死んでもらいましょう」


 オキがそうつぶやいたのを受けて、ヒジカが言う。


「5もいらねぇ。3あれば十分だ。あとは皆殺しでいこう」


 ソウルさんは、二人の物騒な会話を聞き流しながら、


「……」


 黙って目を閉じているだけ。


 そんなソウルさんに、

 隣に座っているゲンが、


「……あんなことを言っていますが、止めなくていいんですか?」


「……実際、3人もいれば十分だろう」


 底冷えする声で、ボソっとそう言ったソウルさん。


 そんな3人の毒組メンバーを後目に、ゲンは、


(まあ……『仕事的』に問題がないなら、別に好きにしてくれればいい。カスが何人死のうと知ったこっちゃない)


 心の中でそう呟いて、流れていく窓の外の景色を眺める。


 ちなみに、この世界の車はガソリンではなく魔力で動くタイプ。

 魔力で動くという点以外は、ほとんど、第一アルファの車と変わらない。

 外見のフォルムも、モーターやエンジンなどの形状も、ほぼ同じ。


 この世界では、大半のテクノロジーが、

 魔力を動力としているという点以外は、

 『まるで第一アルファのデザインをモデルにしているかのよう』に、

 見た目も仕組みも、第一アルファのソレとほぼ同じ。



 ちなみに、テレビなども存在するし、

 それを製造している会社もあるのだが、

 造っている当人たちでさえ、

 『どうして映像が映るのか』はまったくわかっていない。

 あくまでも『五大家』に『造れ』と命令されて造っているだけ。

 それがこの世界における『テクノロジー』の基本。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る