全面降伏。

全面降伏。



(落ち着け……もう状況は分かった……この女には、絶対に勝てん……実力が違いすぎる……この女は……厄介さなら、アモンよりもはるかに上……)


 色々あって、結果、ゴミスは、自分の状況を理解した。


(ゼノリカというのが、具体的にどういう組織なのか、まだ、いまいちよくわからんが……とにかく、そこらのしょっぱい新興宗教ではない……)


 具体的に、どういう流れを経て設立された組織なのか――そこに関しては、さっぱり想像すらできない。

 『これだけの存在』を『中心』に据えているほどの組織なら、

 いやがおうにも『名前が売れてしまう』はずなのだが、

 しかし、ゼノリカという名称は、噂レベルでも、さっぱり聞いたことがない。


(全宮の隠し玉か? ……もしくは、罪帝の秘密部隊? ……なんでもいいが、とにかく、俺一人で対処できる問題ではない……『上』に『丸投げ』が安定スジ)


 そこでゴミスは、スゥと息を吸い、

 両手を上げて、


「オッケー! 降参だ! 全面降伏する! もう、十分すぎるほどにわかった! だから、本当にもういい! どうか、勘弁してくれ!」


 とにかく、相手を刺激しないよう、

 態度と言葉に注意しつつ、



「ここまでの非礼は全て詫びる。望むなら賠償金も払おう。もう、本当に折れたから……すべて、そっちの言うとおりにするから。交渉をする気もないから! だから、この無意味な戦いを、本当にやめよう」


 『温情』を、全力で望むゴミス。


「あんたのすごさはよくわかった。すごいよ、ほんと。ゼノリカ……ああ、すごい組織だ。内情は知らんけど、人材はすさまじい。ゼノリカは素晴らしい」


 全力の『よいしょ』をはさみつつ、

 反抗や抵抗の意思がないことを、

 身振り手振りで、猛アピールしつつ、


「本当に、もう、わかったから……本当に、本当に、建設的な話し合いをしよう。そっちにしか利がない意見であっても耳を貸すから! 確かに、俺風情があんたとWINWINを望んだのは傲慢だった。認める! だから、このクソほどの価値もない足踏みは終わり。なっ」


「その意見にはおおむね賛成」


 ドナの言葉を聞いて、ゴミスは、


「……ふぅ」


 心底安堵した顔で、息をついて、


「前提を整えなおそう。正式に宣言する。ガタラの件は完全に忘れよう。正直、あいつの損失は痛手だが……完全に、なかったことにしよう。これは、こちらの誠意と受け取ってもらいたい。幹部を消されているのだから、この点に関しては、本来なら、普通に賠償を求める点。賠償を求めて至極当たり前の点……しかし、目をつぶる。このことをまずは念頭に置いてもらいたい」


 これは、もはや、交渉ですらない。

 完全なる泣き言。

 『もう勘弁してください』をかみ砕いているだけ。


「Cレリックも……本当の本当に、完全にあきらめるから。そっちで好きにしてくれればいい。どうせ、ハク付けとして所有していただけで、ないと困るものじゃない」


 Cレリックは性能が破格すぎて、ヤクザの日常生活においては使いどころがない。


 基本、『Cレリックを使わなければいけないほどの強者』は五大家の関係者にしか存在しない。

 だが、ゴミスには、『五大家の関係者と敵対する気』はまったくない。

 つまり、実用性は皆無ということ。



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