ようするに、アモンさえ倒せばオールオッケーってことだろ?

ようするに、アモンさえ倒せばオールオッケーってことだろ?


(ジャミをこえる……その発言の真意はどこにある……ジャミというのが、こいつより上位の強者ということか? いや、そんなわけがない……)


 たった一発くらっただけだが、

 しかし、これまで、山ほど修羅場をこえてきたゴミスにはわかる。


(このガキの姿に擬態している男……アモンは、ハンパではない超人……この男以上の強者など、そうそういるわけがない)


 さすがに、『完全院リライト』や『全宮テラ』には劣っているが、しかし、みたところ、アモンは、完全院リライト直轄の特別選抜部隊『クリムゾン・スターズ』の隊長クラスではある。


 つまりはこの世界における最強格。

 間違いなく雲の上。

 めったに出会えない稀代の超人。



(おそらく、ジャミというのは、ゼノリカ教が信仰している神……このアモンという男は、信仰対象の神を超えようとしている……そんなところか)



 と、

 『自分の中の常識』に照らし合わせて状況を分析していくゴミス。


 ある程度、現状の輪郭が見えてきた気になっているゴミスは、


(このアモンという男が相手では、ガタラなどひとたまりもない……)


 ガタラも相当の手練れだが、今回は相手が悪すぎた。

 アモンの強さは『限界の壁を越えた先』にある。


(これほどの強者となると……コスモゾーン・レリックに選ばれている可能性がある……が、まだ完全契約はしていない様子……)


 ゴミスは、シアエガと簡易の契約を交わしているため、

 シアエガの大まかな現在地が理解できている。

 シアエガは現在、あの猿顔に所有されている。


(部下に持たせているってことは……コスモゾーン・レリックに支配される気はないってこと……)


 具体的な風景が見えてくると、

 状況が綺麗に整理できてくる。

 ……あくまでも、ゴミスの中での話だが。


(……ようするに、このアモンという男を倒せば、ミッションクリアってことだな……)


 『考えるべき事案』は多そうに見えたが、

 実質的なところ、コトは単純で、

 敵の『総大将』であるこのアモンという男を倒してしまえば終了。


 あとはゼノリカの財産とシアエガを回収すれば終了。


 ――理解に届いたゴミスは、

 全身にオーラと魔力を充満させて、


「……久しぶりだな……結末の決まっていない、ガチンコの殺し合いをするのは……」


 これまで、仕事で抗争や決闘に興じることは何度かあったが、

 本気の殺し合いに発展した経験はさほどない。


 ゴミスの『実質的な仕事内容』は、

 結局のところ『暗部の政治』であり、

 『ヒリついた駆け引き』という修羅場は何度もくぐりぬけてきたが、

 『どっちの武が上か』で生死が決まる鉄火場の経験はそう多くない。


「さあ……行こうか」


 そうつぶやいて、

 ゴミスは、グンと足に力を込めた。

 豪速のダッシュで距離をつめると、

 オーラを込めた右の拳でアモンの顔面めがけてストレートをぶちこもうとした。


 先ほどとは違い、気合の入った一発!

 魔力とオーラを練り上げて、

 丹念に殺意を込めた、

 渾身の一撃!


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