『ブナッティ・バロール』VS『シアエガ』

『ブナッティ・バロール』VS『シアエガ』


 『組織』というのは『夏場の魚』より腐りやすい生モノ。

 大きくなればなるほど、腐ってくる場所が多角的になり、

 その速度も歪み方も、どんどん増していく。


 ――だが、ゼノリカは『他に類を見ないほどの巨大組織』でありながら、

 かつ、結成から一万年近く経つというのに、

 いまだ『驚くほどの高潔さ』を保っている。


 その『最も大きな理由』はもちろん『この上なく尊き神の王』だが、

 その『次』に理由を並べるとすれば、

 やはり、ドナの名前が挙がってくる。


 ゼノリカをヤンデレ気味に愛している精神的潔癖症。

 高潔なる闇のバラ――エキドナール・ドナ。


 ※ ちなみに、本来なら、彼女には『第六席』が与えられる予定だったが、

   『十席』にいた方が『下との連携が取れやすいから』と自ら十席を望んだ。

   『十席の序列三位』に落ち着いたのも彼女の望み。

   『十席の統括』というポジションは彼女の望みではなかった。

   というか、本人的には、ずっとUV1として現場にいたかったのだが、

   『さすがに、お前のポジションを天下のままにしておくのはアカンやろ』と、

   神自身に言われてしまったため、断り切れず、

   すったもんだあって、結果、今の地位に落ち着いた。



 ――バロールは、


(Cレリック『シアエガ』……私のプロパティアイで見えないから存在値『101』以上は確定……まあ、それは最初から分かっていたこと。コスモゾーン・レリックという御大層な名前で『存在値100以下』という事はないだろう。問題なのは『程度』……どのくらいの強さなのか……)


 全身にオーラを充満させながら、


(700前後までなら、私一人でもどうにか出来ると思うが……1000クラスだとタイマンはキツいな……)


 などと考えつつ、

 シアエガと対峙する。


 静かな空気が流れた。

 わずかな静寂。


 にらみ合いの末、

 ゆるやかに武を構えたバロールは、


「じゃあ、いくから……貴様の『程度』を見せてみろ」


 そう言って、軽く右足に力を込めた。

 その直後、

 ――フっと、軽やかに、バロールの姿が消えた。


 よどみない次元跳躍。

 有機的に、シアエガの死角へもぐりこみ、


「――異次元砲」


 『挨拶の牽制』で『軽く削り』をいれようとした。

 あくまでも様子見なので、魔力はほとんど込めていない。

 一応、異次元砲なので、最低限の威力は保証されているが、

 最高最大出力と比べたら7割以下。

 ようするに、この一手は、バロールにとって、

 カーンとゴングが鳴った直後のマナー、

 『拳合わせのジャブ』みたいなもの。


 ――だったのだが、


「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 シアエガ(ガタラの体)の腹にぽっかりと穴があいた。


 バロールの視点で言えば、

 非常に軽い攻撃だった。


 しかし、


「ぐぬううっっ! ごはっ! がはっ! ば、バカなぁああ! な、なんだ! その強大な魔力っっっ!!」

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