最強の剣士。

最強の剣士。


「平熱マン・スラッシュ!!」



 プライマル・プラチナスペシャルの効果が乗った平熱マン・スラッシュは、

 それまでの一撃とはまったく性質が異なっていた。


「――ぬぅっ」


 ギリギリのところで回避するセン。


(鋭さの次元が違う、まったくの別物……というか、これは『平の剣』ではない……これは、まるで、俺の――)


 おののいているセンに、

 平は言う。


「遥か遠き師よ……あなた様の尊さを、ボクは今……『己(おの)が体の芯』で実感しております。――あなた様は本当に尊い! 200億年を積んだ結晶! 全ての絶望を超えてきた神の御業! ああ、尊い! あなた様は、いつまでも、どこまでも、常に、色あせることなく美しい!!」


 平熱マンは加速する。

 その身に宿った『神の剣』を行使しながら、


 しかし、ただ『神の剣』を振り回すだけのお人形にはならずに、


「ボクの中で一致していく……『師の器』と『師の教え』と『ボクが積み上げてきた全て』が、ボクの中で……一つになっていく……」


 時間とともに、洗練されていく。

 狂気の才能。

 『剣を使う者』としての破格の才覚。


 ゼノリカの三至天帝。

 タイマン最強の剣士。


 その称号は伊達じゃない。



「俺を追い続け……俺の器に自分に重ね……そして、ついには、俺の向こう側へと届いたか……平……お前は本当に天才だ……嫉妬に値する」



「師よ……ボクの目には『あなた様の向こう側』など、わずかも見えておりません……」


「いや、届いているよ。ただ足りていないだけで……お前の剣に秘められた『可能性』はすでに俺を超えている。俺が磨き上げてきた『器』の中に『お前の全て』が満たされて……お前の『未来』は完成した。あとは積み重ねるだけ……お前は……お前こそが、世界最強の剣士だ……」


 センは、感極まった顔でそう言ったのちに、

 ニっと微笑んで、


「だが、勝敗は別だぞ」


 そう言うと、

 センは、『キノキの棒』を召喚して、


「師として……お前に見せよう。その領域に至ってしかし、『お前はまだ蕾』だと……『咲き誇るその日まで、わずかも慢心は許されぬ』という事を……お前の親として、その身に刻み込む」


 グンと、センの圧力が増した。

 センが手にしているのは、どこからどう見ても『ただの棒』でしかない。


 ――『神気が抑えこまれている現状』だと、

 キノキの棒は、本当に、ただの硬い棒。


 だが、


(とんでもない圧力……)


 『世界中の妖刀を、目の前に、ズラっと並べて揃えられた』かのような、

 そんな、獰猛(どうもう)極まりない禍々しさを感じた。


 『ただの棒を向けられているだけ』とは、到底思えない。

 極端な圧力。


「残り五分……俺はお前を殺す気でいく……死ぬ気で耐えろ。さもなければ、殺す……いいな、我が弟子『平熱マン』よ」



「ハナから! そのつもりでございます! この上なく尊き我が師よ!」



 空間を駆け抜ける両者。

 剣と棒の『弾き合う音』だけが世界に響き渡る。


(間違いなく『ただの棒』……なのに!)


 平熱マンの重たい汗が飛び散る。


 センが振るう棒は、

 現状、間違いなくただの棒だが、


 ――しかし、恐ろしく鋭い!!

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