冒険の書(仮免)。
冒険の書(仮免)。
「……ま、とりあえず、ヤバそうだったら退却して準備を整えるということで……」
結局のところ『いったん、扉の向こうを覗いてみよう』ということに落ち着いた。
「そもそも、本当に『これ』で開くかどうかも微妙だし」
などと言いながら、
センは、フワリと浮遊して、
目的の鍵穴まで飛ぶと、
そこで、
「ふぅ……」
軽く深呼吸をしてから、
はやる気持ちをおさえるように、
「さぁて……なにが出るかな、何が出るかな」
言いながら、
ついに、
ようやく、
センエースは、
『禁域の扉』に、
『冒険の書』をセットする。
すると、
――冒険の書(仮免)がセットされました。
『真・第一アルファゲート』を開きます――
声が響くと、
扉がカっと光った。
強いかがやき。
その光は次第に大きくなっていって、
センエースの視界を覆いつくす。
つい、反射的にまぶたとまぶたが近づくものの、
『この何が起こるかわからない状態』で『目を閉じる』ほど、
センエースという神は愚かではない。
だから、なんとか視界は保とうとして――けれど、
(な、なんも見えねぇ……これは、光が強いとかじゃねぇ……視界を殺されているっ!)
『究極の神』が、何も感じることもできなかった。
だから『不可視』を『押し付けられている』と即座に理解。
「ぐぅ……」
視界を奪われて、
強い光に包まれて、
――数秒後……
その発光は、静かに鎮まった。
光が溶けた時、
センの視界には、
(荒野……)
赤茶色の土が広がり、
ところどころ、申し訳程度に緑が生えている、
そんな荒野に、センは、一人で立っていた。
だだっぴろいという感じではなく、周囲は、高い丘に囲まれている。
東京ドームのど真ん中に立っているところを想像すれば、
今のセンの視界的状況が少しは把握できるだろうか。
――センは、周囲を見渡すが、
(扉が消えた……)
どこにも扉の姿はなかった。
アダムもシューリもいない。
セン一人だけが、
この場に立っていた。
(……『マジで、少し覗いて帰るつもり』だったんだが……『それは許さねぇ』ってか……なかなかの覚悟を要求してくるじゃねぇか)
周囲を警戒しつつ、
『最初の一手』をどうするべきかと悩んでいると、
少し離れた場所に、
次元の亀裂ができて、
(……無色のオーラ……)
その亀裂から、
『金のヴェールをまとった男』のような『異形』が出現した。
決して人間ではないが、人間サイズの人間フォルムをしている妙なバケモノ。
その異形は、黙ったまま、ジっと、センエースを見つめていた。
そんな『謎の時間』が三秒ほど経過した時、
しびれを切らしたように、
センの、
「どうした? 歓迎してくれるんだろ? 自己紹介でもしてくれや」
その発言に対し、
謎の異形は、
たんたんと、
事務的に、
「私はウムル=ラトという」
「そうですか。私はセンエースです。はじめまして。本日はどうぞ、よろしくおねがいいたします」
センの慇懃無礼を聞いているのか聞いていないのか『さっぱりわからない無表情』のまま、
ウムルは続けて、
「私の仕事は、貴様に、たった一つの真理を教えること」
「へぇ……そうなんだ。楽な仕事だね。できれば、俺もそんな仕事に就きたかったよ」
センの軽口をシカトして、
ウムルは、
「――『舞い散る閃光センエース』。世界最強は、お前じゃない」
ハッキリとそう断言した。
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