安っぽさ。

安っぽさ。


「いい挑発だ。どうしても笑って受け流せない……非常に上質な挑発」


「挑発? 違うな。『どうかバカのまま死んでくれますように』と祈っているだけだ。祈りが届きそうもない相手の時は、もちろん、祈ったりなんてしないわけだが……ほら、お前の場合、アレだから……」


「……うたうねぇ。安っぽいソウルレリーフの分際で、よくもまあ、そこまでうたえるもんだと感心する」


「安っぽい? 自己紹介か?」


「……」


「ん? おいおい、どうした? なんか、こめかみに怒筋が出ているぞ。スマイル、スマイル。そんな顔してないで、笑えよ、ベジ〇タ」


 ド直球の挑発に対し、

 P型センキー・ゼロオーダーは。




「――そのセリフは強者の特権であって、お前が使っていいセリフではない」




 血走った目で、そう言い切った。


 そんなP型センキー・ゼロオーダーの反論に対し、

 クスオは、ニタリと黒い笑顔で、


「ネタにマジレスすんなよ、草生えるだろ」


「……」


「戦術や名言に関する『薄い知識』があるだけの頭でっかち。お前ごときが、俺に勝てるわけねぇだろ。『かつて主役を張った男』の底力に震えて眠れ」


「かつて世界の中心だったことが、どれだけ自慢かしらんが……所詮は『最も大事な闘い』に敗れてソウルレリーフに堕ちただけの『しょっぱいカス』が大きな事を――」


「ひがみはもういいよ」


「……ぁ?」


「お前じゃ、世界の中心には絶対になれない。お前はその器じゃない」


「……」


「だから『堕ちてしまったとはいえ、一度は主役を張った俺』をねたんでしまう気持ちはわからないでもない……けど、まあ、いったん、深呼吸でもして、落ち着けよ、P型……P型……あれ、おまえ、名前、なんだっけ? ごめんな、俺、脇役の名前は覚えられないタチなんだ。なんせ、ほら、元主役だからさ。ヒロインやラスボスの相手で忙しくて、端役の名前にまで意識が回らなくてな。……えっと、確か、お前は……『P型かませ犬』くんだっけ?」


「……」


 挑発だという事はわかっている。

 それがわからないほど愚かではない。

 『乗ってしまうほうが愚かしい』ということは重々理解できている。


 しかし『理解』などどうでもいい。

 そういう問題ではない。



「いいだろう……」



 P型センキー・ゼロオーダーは、小さく、そうつぶやくと、

 芯のオーラをグワっと発火させて、


「その挑発を受けよう。これより、俺は、全身全霊で、お前を殺しにいく。他の全てを捨てて、お前だけを見据え、お前だけを殺す」


「おぉ、こわい、こわい」


「……もう俺は絶対にお前をナメない。つまり、お前の『最大の切り札』は死んだ。イコール、お前の勝ち筋は完全に死んだってこと。厳かに、粛々と、俺に殺されて、無様に朽ち果てろ。テンドウクスオ」


「……『ナメられやすい』ってのが、俺の特質であることは事実だが、しかし『最大の切り札』ではねぇよ。一番の切り札なら、別にある」


「ほう、まだ何かあるのか。なら、魅せてみろよ。どんな覚醒技か知らんが、なにをしようと、この差を覆すことは――」


「ああ、違う、違う。覚醒技とかではない」


「……では、なんだ」


「簡単に言うと、戦術。最初から通しての、一本通った戦術が、俺の最大の切り札」

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