モチつけ。

モチつけ。


「俺は、P型センエース2号でも、ソンキー・シャドー(マニアクス)でもない。俺は貴様を倒すものだ」


 その宣言を受けたセンエースは、


「どこまでもパクっていくスタイルか……笑えねぇ」


 少しだけ視線を強めて、


「しかし……おいおい、どういうことだ……なんで、融合していながら、魂魄にわずかも歪みが発生していない?」


 完璧に調和している『P型センエース2号』×『ソンキー・シャドー(マニアクス)』の姿に困惑しつつも、概念を理解しようと頭をまわし、


「……スピリット・ファンクションの強制執行は、確か、『対象が持つ機能を呼び出す事』……とすると、ソンキーの根源的魂魄に、そういう機能が備わっていたってことか? んー、よくわかんねぇな。世界進化後に追加された機能については、まだ、イマイチ把握しきれてねぇ……」


 自分自身に深くアクセスすることで、

 神のシステムを部分的に解することができるのだが、

 完全な情報は得られない。

 イメージ的には『不親切』なゲーム。

 攻略サイトをガン見しないと、システム一つとっても、具体的にどんな仕様なのかわからないというクソゲー。


「まあ、いいや。とにかく、今のお前は、ついさっき俺をボコしてくれたソンキーと、スペックアップしたP1が、歪みのない状態で合体した『とんでも状態』……って認識で大丈夫か?」


「違うな。それ以上の力を持っている。なぜなら、俺は、最強の携帯ドラゴンを所持しているからだ。『このMDワールドの支配権を得ているお前』でも超える事が出来なかった、絶対的ランキング一位の『末期インフレデータ』が積まれた最強の携帯ドラゴン」


「……末期インフレ……」


「ようするには、お前が第一アルファで積んできたデータだよ、センエース。お前が必死になって積み上げたデータが俺を底上げしてくれている。最強の戦闘力と、最強の精神力――その二つを併せ持つ上、膨大な補正まで受けている今の俺は、間違いなく最強」


「……なるほど。つまり、お前は『ぼくのかんがえたさいきょうのセンエース』ってわけか。へー、すごいねー」


「その呑気……貫けると思うなよ。お前は、絶対に俺には勝てない。勝てる理由がない」


 ニィっと笑い、


「さあ、瞠目しろ。そして、絶望するがいい。『全ての絶望』をあまねく絶望させてきたお前でも、この俺――『P型センキー』という絶望だけは超えられない」


 そう言うと、

 スゥと息を吸い、




「究極超神化7!!」




 叫び、気合いを入れる。

 ――だが、


「……ん?」

「……ん?」


 何の変化も起きなかった。

 だから、向かい合っている両者は、ともに疑問符を口にして首をかしげる。



「ん、ん?! ……ごほんっ!」


 P型センキーは、一度、咳払いをしてから、

 先ほどの『ズレた数秒』をなかった事にしてから、

 あらためて、

 全力で集中し、

 全身に力を溜めて、

 最果ての自分を心に描きながら、

 魂魄に気合をブチこんで、


「究・極・超・神・化・7っっ!!」


 一つ一つの言葉を丁寧に、

 アクセントにも気をつけながら、慎重に叫んだ。


 ――が、


「おぉおい! はぁ?! ちょっと待て! なんでだ?! どうなっている?! なんで変身できない?! おかしいだろぉおおおお!」


 その滑稽な様を見ていたセンエースは、

 呆れ交じりの声で、


「俺、もう、攻撃していいか?」


 言われて、

 P型センキーは、あわてて、


「モチつけ! お前は、そこで、クリームソーダでも飲みながら待ってろ!」


 そう叫んでから、


「究極超神化7!! 究極! 超神化! 7っっ!!」


 色々と試行錯誤しつつ、

 何度となくためしてみたが、


「だ……ダメだ……ムリくさい……な、なんでだ……」

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