開け、殺神遊戯モード。

開け、殺神遊戯モード。


「……同格相手の真剣勝負では使えない技? そりゃどういう意味だ?」


「言葉通りの意味だ。それ以上でも、それ以下でもない。この技……そうだな、『オメガバスティオン』とでも名付けておこうか……オメガバスティオンは、ガチのタイマンでは使い物にならない、完全な死に技だ」


「じゃあ、その死に技を二回も使われた俺は、真剣勝負をするまでもない絶対的な格下ってことか?」


「それ以外のどんな解釈がある?」


「……おいおい、急にイキりだして、どうした……なにかいいことでもあったのかい?」


「ああ、あった」


 ニィっと微笑み、


「極限の絶望を前にして、俺の中のセンエースが沸騰した。最短でも一時間はかかる予定だった『導入の処理時間』を殺してくれた。……ああ、いや、この言い方だと、まるで、処理速度を速めてくれたみたいだな。それは違うから、言い変えようか。ちゃんと表現しようとすると難しいんだが、なんというか、その、つまり……そう、『一致』したんだよ、単純に、純粋に……」


「……だから、わからねぇんだって、お前が言っていることは、なにもかも」


「ならば、『理解すること』を望まなければいい。どうせ、結果は変わらないのだから」


 そんなP型センエース2号のセリフを受けて、

 ゼッキは、軽くムっとした顔を浮かべてから、

 ふぅと、息を吐いて、


「……ん……ま、そりゃそうだな。お前が俺に消されるって結果に変化はない」


 そう言うと、

 ゼッキは消えた。


 高次の瞬間移動。

 ゼッキは速く、鋭い。

 先ほどまでのP型センエース2号では、捉えるのに苦労した空間跳躍。


 だが、


「幼いな……当たり前の話だが」


 ボソっとそう言った直後、

 P型センエース2号は、


「つい、『醜い』と表現したくなってしまうほどにトロい」

「ぐぇっ!!」


 空間を駆けていたゼッキの首を、背後から掴み、


「――雑という言葉すら使えないほど、今のお前は『流(りゅう)』が、なっていない。神闘における『寄せ』の基礎が、わずかも理解できていないから、『髄』を解している者の視点でいえば、『水の中を歩いているよう』にしか見えないんだよ」


「ぐぅう……ぃぃ」


 エグゾギアの上からでも頸動脈がしまるほど、とんでもなく強い力で首を絞められ、呻き声をあげることしか出来ない――そんなゼッキに、


「今の俺の存在値は、旧カンストを余裕で超えている。戦闘力も、P型センエース1号の器をそのまま引き継いだから、今のお前では、想像すらできない『遥か高み』にある」


 そう言ってから、首を絞めていた手の力を緩めた。

 ボトリと落とされて、


「げはっ、がはっ!」


 必死に酸素をむさぼるゼッキ。

 そんなゼッキの横を、ゆったりとした歩みで通り抜けながら、


「ゼン、お前は、自分の全力を試したがっていたな」


「……かはっ……はぁ、はぁ……」


「特別に受け止めてやる……さあ、くるがいい」


「……っ」


「遠慮するな。俺も、今のお前の全部を把握しておきたいんだ。というわけで、さあ、みっともなく無様にあがけ」


 先ほどまでとはうってかわった、酷く超然とした態度で、

 ゆるやかに両手を広げるP型センエース2号。



 ゼッキは、

 一度、ギリっと奥歯をかみしめてから、


「……開け、殺神遊戯モード」

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