『最強の俺と戦ってみたくはないか?』『いいだろう。お前のワナにまんまとかかってやる』

『最強の俺と戦ってみたくはないか?』『いいだろう。お前のワナにまんまとかかってやる』



「おい、まさか……本当に、何もないワケじゃないよな?」


 などと言ってくるゼッキに、

 P型センエース2号は、

 渋い作り笑顔を向けて、


「一つ提案がある……のですが、ここらで、少しばかり、ティーブレイクといきませんか、ゼンさん」


 揉み手をしながら、そんな事を言った。


 それに対し、ゼッキは、


「……マジで、ないんかい……」


 ガクっとうなだれながら、


「じゃあ、もういいや」


 そう言って、

 両手を、P型センエース2号に向け、


「すぅうう……はぁあ……」


 目を閉じて、精神統一。

 オーラと魔力を溜めに溜めてから、


「すぅうう」


 最後に息を吸って、

 ――カっと目を開き、



「異次元砲ぉおおおお!!」



 先ほどの軽撃ちとは違い、

 渾身で撃たれた異次元砲。


 強大な照射が、P型センエース2号の全身を襲う。


「ぐぁああああああ!!」


 ほぼ一瞬で、

 跡形もなく木っ端みじんになったP型センエース2号。

 どこまでも呆気ない最期だった。



「かなりのヤバい強敵……だと思ったんだけど、そうでもなかったな……というか、もしかして、俺が強くなり過ぎたのか? ゼノリカ以外だと、もはや誰も相手にならない……そういう所まで来てしまったのかもな」



 などとブツブツ言っているゼッキの向こうで、


 粒子になって空間に溶け込んでいる『P型センエース2号』が、

 黙ってジっと息を殺していた。


(は、バカが……所詮はガキだな。『どうしようもないほど存在値に差が開いている』という訳ではないんだから、流石に、どんだけ威力を高めていようと、異次元砲の一発や二発くらいは耐えられるっつーの)


 気配を消し、

 空気に溶け込みながら、


(このままどうにか時間を稼ぐしかない……が、しかし、いかにゼンが『ドのつくアホガキ』とはいえ、三時間近くも騙し切れるとは思えない……どうにか、次の一手を考え――)


 と、心の中でつぶやいていた、

 その時、


「……どうやら、俺の油断をついて攻撃してくる作戦……って訳ではなさそうだな」


 ゼッキが、空間に溶け込んでいるP型センエース2号を睨みつけて、そう言った。


「っっ?!」


「なに驚いたオーラを出してんだよ……いや、流石に、そのくらいは気付くって……」


「……」


「どうやら、あんたは、なんとしてでも時間を稼ぎたいようだな……えっと……確か、俺をアンテナ基地にしたいんだっけ? で、1号の戦闘力データがどうたら……」


 ぶつぶつと言ってから、


「これは、あくまでも推測だが……おそらく、今のあんたは、アップデート中のパソコンみたいな状態で、アプデが終わると、すごく強くなる……みたいな感じなのかな?」


 ゼッキの推測を聞くと、

 P型センエース2号は、自身の粒子を結集させて、

 元の姿に戻り、


「……ああ。おおむね、その通りだ」


 そこで、P型センエース2号は、少しだけ頭をまわし、


「P型センエース1号のデータを俺にコピーすることで、俺は、今よりも30パーセントほど強くなれる。もちろん、『全力を出した俺』の30パーセント増だ」


「……ふむ」


「そうなれば、お前とも互角に渡り合える。勝てるかどうかは微妙なところだが、少なくとも、みっともなく逃げ回ったりはしない」


「30パーセント……微妙なラインだな……あんたの全力がどの程度か不明だから、なんとも言い難いけど……」


「どうだ、ゼン。今の俺なんか倒したって、なんの自慢にもならないんだし、ここは、少し待ってみないか?」


 P型センエース2号の言葉を受けて、

 ゼッキは、


「……ふぅむ……」


 数秒考えてから、

 ――答えを出す。


「……いいだろう。お前のワナにまんまとかかってやる。好きなだけ時間を稼ぐがいいさ。なさけないままの貴様を倒しても自慢にはならんからな」


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