ここは、まだ坂の途中……

ここは、まだ坂の途中……



 究極超神化7にたどりついたソンキーは、

 あまりにも強大だった。



 何がなんだか分からない。

 ――そういう、遠い次元。


 陰すら見えない、

 遠い、遠い、遠い、そんなドコか。



「――『本物の真理』は、まだ、影も見えない」


 ソンキーは、


「ここは、まだ坂の途中。『辿り着いた』という感情の着地は、ただの錯覚……」


 ぽつりと、


「俺は、まだ、脆弱なカケラ」


 そうつぶやきながら、

 厳かに、歩を進め、


「それでも、きっと、」


 バグの目の前までくると、


「俺の歴史に、貴様の死を飾るくらいは出来るだろう」


 ヒュッっと、小さく、口笛を吹いた。

 すると、音が線になって、奇怪な粒子の陣を張る。



「――【ギルティ/チェイン:ソードスコール・ノヴァ】――」



 またたくまに、メタリックな黒と銀の円が広範囲に広がって、

 精緻なオーラソードが、闘神の前に整列し、深く平伏する。

 厳かな金紫の鎖に縛られた剣たちは、



「穢れを背負い……陰(いん)も影(かげ)も飲み込んで……美しく……ただ、美しく」



 命じられて、

 歓喜の声をあげた。

 ギリギリと音をたてて、時空に傷跡をつけていく。


 目に見えて意気込み、高純度のオーラを捻出していく剣たち。


 剣たちは思う。

 神の前で踊る許可を得た。

 なんという僥倖。


 キンッッと、硬質な音がして、

 剣は翼になる。


 神の両手に魔力が集まっていく。

 飛翔させた斬撃に、超電導の回転とレディエーションを込めた。


 自由な遊戯。

 完全なるランダム。

 超新星の営業時間。

 プロトコルの永久保存。


 言葉がドロドロに熔解して、

 点と線が自由になって、

 選択肢を殺していく。




「ぎぃっっ!! ぎがぁああああああああああっっ!! うぐぃいいい! ぁああああ!」




 艶(あで)やかに貫かれ、

 バグの体が、裂けて燃えた。


「ぎぃいい! がぁ! 熱い! 寒い!! 苦しい! 私の全部が壊れる! もうやめろ! やめてくれ!!」


 金の炎は雅(みやび)な龍となって、芸術的に荒々しくバグへと食らいつく、


「ぎぃいいいい! ひぃっ、はぁっ……ぅぎぃ……うぐぅ……」


 『損傷の回復』に着手するよりも早く、

 次の斬撃が、バグの体をさばいていた。

 認識が追い付かない。

 痛みを感じる余裕すらなかった。


「――まっ、まって――」


 必死に距離を取ろうとするが、

 許されるはずがない。

 バグのルートはすでに決定されている。


「――ほんと、ちょっと、まっ――」


 神の前で、

 無様はさらせない。


「むり――勝て――」


 バグを卸(おろ)していく刃の雨。

 無慈悲な一手が連鎖する。

 美しい絵画だった。

 きわめて厳かな、神の一手。



「むりむりむりむりむりぃい!! もう、いやだ! いたい怖い、いやだ、ホントむりぃいい!」



 バグが漏らす無様な悲鳴を、無慈悲に包み込み続ける剣の嵐。

 所詮は、『舞い散る閃光』の外殻を模倣しただけのハンパな贋作。

 センエースという最果てを正しく学習できる狂気など存在しない。


「ああぁ! いぃいい! 一分だ!! いや、10秒でいい! 私の全部を捧げる! 最後の10秒以外はすべて持っていっていい! だから! 自殺する余力を! この恐怖から逃れる力を!!」



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