どちらが相手の支配者かを問う闘い。

どちらが相手の支配者かを問う闘い。


 劇的な進化を経たアスカは、


「さて……」


 そこで、絶賛マヒっているウラスケに視線を向けて、


「それじゃあ、交渉をはじめましょうか」


 言いながら、ウラスケの目と鼻の先まで移動すると、

 ウラスケの頬をなでながら、


「あなたに対する私の……私達の要求はただ一つ。正式に、私達の騎士になって」


 喋ることもできずに固まっているウラスケに、アスカは続けて、


「もちろん、タダでとは言わないわ。私達の要求をのんでくれるのであれば、私達の全てをあげる。肉体も魂魄も……全部全部、あなたの好きにしていい」


 妖艶に微笑むアスカは、

 そこで、指をパチンと鳴らし、


「……返事は?」


 強烈な麻痺から解放されたウラスケは、いまだ残る精神的な違和感の余波を確認しつつ、

 アスカを睨みつけならが、

 即座に、




「――はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」




 自分の底、奥深くへと潜っていく。


 その様子を見て、アスカは、表情をゆがめ、


「どういうつもり?」


「――学習完了。耐性調節終了」


「……耐性の調節なんて、自力で出来るわけ――」


「メルクリウスのシステムを一部改造して、MD粒子回路の閾値を調節した……もっと言えば、『対お前用』に激烈なアップグレードをさせてもろた」


「……」


「ナナノと融合したことで、なんや、妙に凶悪な性能になったっぽいけど……パワーアップする権利を持っとるんは、そっちだけやない。――あんまり、このぼくをナメんなよ」


 そこで、ウラスケは、グっと唾をのんで、


「……こんなこと、ほんまは言いたく無いけど」


 そう前を置いてから、グワっと、視線を鋭くして、




「………………これでも、ぼくは、正真正銘、タナカ家の人間や。カス相手にあっさりと膝を屈したりはせん!」




 そこで、アスカは、貫くような目でウラスケを見つめる。


「なるほど……やはり、あなたは素晴らしい。是が非でも、私の一部になってもらう」


「お前なんかに奪われるほど、ぼくはヤワやない。お前ら二匹のバケモノをブチ殺し、繭村と高瀬を取り戻す」


 宣言し、

 ウラスケは飛翔した。

 オーラを練り上げながら、


「ボコボコにして、ひっぺがす!! それが無理なら、他の方法を考える! なんとしてでも、二人を救い出す! なんべんでも言うぞ! ぼくをナメんな、イカれたバケモノども!!」


 高速の襲撃。

 無数のジオメトリを展開しつつ、

 バフとデバフを拡散させながら、

 拳の雨で、アスカを討とうとする。


 が、アスカは、その全てをヒラヒラと軽やかに避けて、


「どちらが相手の支配者か……それを、ぶつかりあって探り合う。けっして、悪くはない提案ね。いいわ、受け入れる」


 言ってから、アスカは、

 ウラスケの腹部に、


「ぐぶっ!」


 ヒザを叩き込んだ。

 くの字に曲がるウラスケの後頭部に、

 続けて、ヒジをブチこむ。


「がっはぁ!!」


 衝撃で首が折れたかと思った。

 しかし、丈夫なドラゴンスーツのおかげで、なんとか死は免れる。


 アスカは、そんなウラスケの頭部をつかみ、




「たった二発……けど、もう充分でしょう? あなたは、力の差が分からないほど愚かじゃない。無意味に殴り合いを続ける必要はないわ」





 淡々と、


「私が、あなたの支配者。これでいいわね?」


 はるか高みから、

 まるで神のように、

 優しく手を差し伸べてくるアスカ。


 そんな彼女をにらみつけながら、ウラスケは、


(マズいな……ここまで強いとは……想像しとったよりも、はるかに上……昨日の連中の比やない……今のぼくでは、どうあがいても勝てん……)


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