遊びでやってんじゃねぇんだよ。

遊びでやってんじゃねぇんだよ。


 神話狩りの台頭で、

 ネオバグたちは、活動を開始した。


 積極的な、世界の捕食。

 神話狩りという『天敵』に『対抗』する為の戦略的反発。


 こう聞くと、

 『神話狩りが動いたせいで、ネオバグも活性化した』

 『神話狩りが余計なことをしなければ、やつらはおとなしくしていた』

 とも捉えられる。


 しかし、それは誤解。

 神話狩りによるネオバグの喚起は、人類にとって、間違いなく最善手。

 あくまでも、ネオバグの『世界に対する浸食時期』が早まったというだけ。

 どっちみち、ネオバグは、いつか、世界を喰らい始める。

 ネオバグとは、そういう生命だから。

 ――ならば、対処は早い方が賢明。



 神話狩りは何も間違っていない――と、神話狩りのメンバーは信じている。



「そして……おれの容姿を見れば分かると思うが、おれたち神話狩りのメンバーは、全員、中学三年生。お前の年齢と大差ないクソガキばかりだ」


「マジか……やけに若いヤツばっかりが来るなぁ、とは思っとったけど……まさか、若いヤツしかおらん組織やったとは……」


「ハッキリ言うが、おれたちだって、いっぱいいっぱいなんだ。責任という重圧に、いつだって、押しつぶされそうになっている。」


 あえて『疲れ』を隠さずに、

 虹宮は、言葉に重ダルさを持たせ、


「偉大なる我らの聖主が、『この世界の代表』という最も大きな責務を背負ってくれているから、なんとか耐えられているが、もし、聖主がいなければ、いまごろ、精神を病んでいたことだろう……まあ、聖主がいなければ、神の試練を乗り越えられなかったから、『聖主がいなかったらどうこう』というのは、絶対的に成立しえない破綻した空論だが」


 ふぅと、熟成されたサラリーマンのようなため息をはいて、


「聖主にはいくら感謝してもしきれない。――なあ、想像できるか、クソガキ。全人類の命運を背負うというその重圧が。お前に、わずかでも想像できるか?」


「……」


 問われたって、当然、答えなど持ち合わせていない。

 全人類を背負ったことなどないし、そもそも背負う気も一切ないから。




「……こちとら、遊びでやってんじゃねぇんだよ」




 虹宮は、一呼吸入れてから、

 キっと、視線に力を込めて、


「退屈しのぎでヒーローごっこをやっているわけじゃない。刺激・スリルを求めて異能ゲームを楽しんでいるんじゃねぇ。最初、そういう感覚がゼロだったとは言わないが、そんなお気楽が、現実を前にして、長く続くわけねぇだろ」


 虹宮の想いが、


「おれたちは、この世界を守るために、必死になって、歯を食いしばって闘っている。辛くて、苦しくて、仕方がねぇが、しかし、おれたちしか出来ないんだから、しょうがないだろ」


 静かに爆発する。


「おれだって、そこらの中3みたいに受験勉強だけやっていたいんだよ。満点目指して教科書反復して、たまの休みにカラオケでストレス発散して、映画見て、ゲームして、ガキらしくタバコや酒やSEXに憧れて……そういう退屈な人生の中で、『世の中つまんねぇ』って文句たれながら、ダラダラして、権利を贅沢に消費して……」


 かつて、虹宮は、そういう中学生だった。

 その退屈からの脱却を願っていた。

 しかし、いつだってそう。

 大事なモノの価値は、なくして気づく。



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