タナカウラスケの携帯ドラゴン――メルクリウス。

タナカウラスケの携帯ドラゴン――メルクリウス。



「こいっ! メルクリウス!!」



「「っっ?!」」



 ウラスケのメルクリウスを目視した味崎と岡葉は、たがいに、顔を見合わせて、



「おいおい、マジかよ……あいつ、携帯ドラゴンを召喚しやがったぞ」


「どうやら……携帯ドラゴンという異次元兵器は『神の試練を乗り越えた者だけの特権』じゃないみたいだね」


「もしかして、他にも使える奴がいんのかね……」


「こうして、すでに一例が発見されたわけだし、いたとしてもおかしくはないね」


「今後は、そういう連中の発掘や徴兵も仕事の一つになる……みたいな流れになるのかね、もしかして」


「さあ、どうかな。さすがに、その辺の判断は『聖主』に任せるべきだと思うね。一兵隊でしかないボクらがどうこう言える領域じゃない」


「同意」


 言いながら、二人は、

 携帯ドラゴンを召喚し、

 そして、



「「アルテマ・トランスフォーム」」



 ドラゴンスーツに身を包み、

 ウラスケのメルクリウスを睨みつける。


 そんな凶悪なオーラを放っている二人に対し、

 ウラスケは一歩も引かず、


「トランスフォーム・モード・ネメシスコード!!」


 その叫びに呼応して、

 メルクリウスが黒き輝きを放つ。



「おいおい、トランスフォームまで使えんのかよ……」

「それも、聞いたことがないタイプ……厄介だね」



 輝きが収束した時、

 そこには、漆黒ベースに銀ラインが入ったドラゴンスーツを纏うウラスケが立っていて、


「救いを求める少女を殺す事しかできない無能どもが、胸を張って偉そうなことをほざくなや。誇るべきは、いつだって、殺した数やなく、救えた命の数。そんな当たり前のことすら忘れたバカたれどもが」



「救いを求めているのは、そのバケモノだけじゃねぇ。つぅか、俺らが救う対象は、そのバケモノじゃなく、『そのバケモノから身を守る術を持たない一般人』だ」


「もし、そこのネオバグが、爆発的に成長したらどうする? ありえないとは思うけれど、万が一、我らが聖主を超えるほどのバケモノになったら? 偉大なる聖主を超える存在などいないと思うけれど、可能性だけなら、いつだってゼロではないんだ。もし、最悪の可能性が実現したら、そのカタストロフを止められる者は、この世に存在しないんだよ? 全人類の破滅。君に、その責任がとれるの?」



「……知ったことか。『泣いとる女』を殺すことでしか救えん世界なんか、ハナから大したことないんやから、黙って滅んでしまえばええ」



「……こいつ、ずいぶんと極端な考え方をするガキだな」


「いわゆる、世界系だね。ヒロインと世界を比べて、ヒロインを選ぶタイプ」


「この世界には、そんなイカれたタイプがいるのかよ。世界とヒロインを比べてヒロインを選択って……世界を捨てた時点でヒロインも死ぬだろうが……どんだけ頭悪いんだ」


「現状、問題なのは、その異常思想そのものじゃない。そんな異常思想に染まった変態が、膨大な『力』を持っているということ。きわめて危険だ。全力で対処すべき案件だと判断する」

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