この茶番に、大団円を刻みこめ。

この茶番に、大団円を刻みこめ。


「おぉい! 言うなよ、クソバカ!」



 その怒声に対して、ソンキーも巻き舌で、


「うるさい、黙っていろ、ド変態! こいつはお前とは違うんだ!」


「あぁん?!」


「みんながみんな、お前のように、絶望を糧に地獄で謳えるわけじゃない。少なくとも、タナカトウシはそういうタイプじゃない。お前がやっていることは、短距離走者に長距離走者の素養を求めているようなもの」


「なんだ、それ。ずいぶんと分かったような口をきくじゃねぇか」


「少なくとも、お前よりは、こいつ(タナカトウシ)を知っている」


「……ほざくじゃねぇか」


 モンジンは、まだ何か言い足りない顔をしていたが、


「……ま、いいか……」


 とボソっとつぶやいた。


 それを受けてというわけではないが、

 ソンキーは、トウシに向けての言葉を並べていく。


「そこのド変態を殺し、権限を奪えれば、ガキどもを復活させることは難しくないだろう。つぅか、俺がやってやる。権限を奪えたってことは、俺が、このド変態を超えたって証明だからな。俺を次のステージへと連れていってくれるのなら、そのぐらいの願いはかなえてやるよ。俺も一応は、神だしなぁ」


「……」


「もっと言えば、さっさと権限を奪って魂魄を回収しないと、復活させるのが難しくなる。今のお前には、グダグダと愚痴っている暇も悩んでいる暇もない」


「……」


「さあ、前提も整ったことだし、いい加減、フィナーレを開始しろ。意味のないお喋りタイムは飽き飽きだ。そこのド変態をブチ殺して、この茶番に大団円を刻み込め」



「最終確認や、ソンキー。もう二度とゴチャゴチャ言わんから、明瞭に答えてくれ」


 そこで、トウシは、グっと顔をあげて、


「……あの鬼畜神をブチ殺せば……ワシは、ジュリアを取り戻せるんか?」


「何年日本で生きてきたんだよ、クソガキ。この手の異世界ファンンタジーモノでは、ラスボスを倒せばオールハッピーエンドになると、相場が決まっている。そんな当たり前、確認するまでもないだろ」


 言葉を受けて、トウシの全身に気力が満ちる。

 ――命が輝く。



「そうやな。今の時代、バッドエンドなんて流行らへん! 『めでたし、めでたし』以外はハジからブチ殺したる!」


 叫ぶたびに、心に活力がわきあがる。

 全身が沸騰する!


「ワシの女、絶対に返してもらうぞ、ぼけ、ごらぁああ! ワシはもう、そいつと生きていくと決めとるんじゃい! ワシの人生邪魔すんなぁ! 人様の恋路を邪魔するクズはぁあああ! 神だろうとなんだろうと関係ないわぁあ! ワシに踏み潰されて、みじめに死にさらせぇええええ!」



 叫びとともに、トウシは飛んだ。

 呼応する神の王。

 神話の衝突。


 ――怒涛。

 鬼気迫る、爆音の嵐。

 互いに絶空の死を奪うあう激闘。


 確定したルートを前に、ふっきれたトウシの脳内は、まるで偉大な名刀のように、ギラギラと研ぎ澄まされていた。

 トゥエルブナインの未来視。

 極致に達した演算速度。


「わかるぞ、ソンキー。あんたの呼吸が見える! 合わせてみせる! ワシならできる! 最強の神と、魂魄を調和させる! そんなこと! ワシ以外には絶対にできん! これは! ワシにしか出来ん不可能!!」



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