本物の絶望。
本物の絶望。
「それだけ強化されておきながら、多少の抵抗すら出来ないとは……本当に使えないクズどもだ」
ミシャンド/ラは、ため息まじりにそう言ってから、
「もういい」
冷徹な無表情。
美少女のかわいらしさなど皆無。
徹底した冷酷をにじませる。
邪悪さに染まった声が世界に拡散したと同時、
ミシャは自身の両手を、まだ二万人ほど残っている彼・彼女たちにむけて、
「せめて、私の養分になって消えろ」
一瞬、ミシャのオーラがグワっと膨れ上がった。
漆黒よりもドス黒い、心かきむしられる、貪食の色。
膨れ上がった黒が、重たい粒となってはじける。
すると、
ジュワっと、
彼・彼女達の肉体が蒸発した。
そのあまりにも残虐なシーンを目の当たりにした岡葉たちは、真っ青になって嗚咽した。
中には、オロロと吐いている者もいた。
無慈悲に熔かされた三万の中学生。
あとに残ったMD粒子だけが、チリチリと揺らめいて、
まるで、居場所を求めるように、ミシャの『中』へとおさまっていった。
数万という途方もない数の命を容赦なく奪い尽したミシャは、
その事実という感慨にふけることすらなく、
虹宮たちに、平坦な視線を向けて、
「最後の一人を残しての時間稼ぎ……当然だが、そんな甘えは許さない。このデスゲームに抜け道などない」
ミシャの言葉が、神話狩りのメンバーの心に浸透していく。
重たい黒で染まっていく、みなの心。
まるで頸動脈でも裂いたみたいに、『絶望』がドクドクとあふれて、彼らの全身を包み、おぼれさせようとする。
ミシャンド/ラが、
「――くだらない遊びはここまで」
フラットに、そう言った直後、重力が、己の仕事を半分だけ思い出す。
ミシャの体が、フワリと、神様の風に支えられているかのように、
ゆったりとしたペースで地面まで降りてくる。
「それでは、これより、本物の絶望を執行する」
宣言した直後、ミシャは、音もなく消えた。
影も残像も残らない、静かな消失。
ミシャンド/ラが消えた――と、神話狩りのメンバーが認識した直後のこと、
彼・彼女たちの後方で、鋭い爆音が響いた。
まるで剣の嵐。
鋼鉄が乱れ暴れるような冷たい無常な音がした。
反射的に振り替えると、粉塵が舞っていて、
十人ほどが光の粒になって消えた。
魂の輝きと、キラキラしたオーラの剣が複雑にからみあって、
幻想的な空間が出来上がっていた。
オーケストラになった淡い輝きに、
ミシャは号令をかけて、己の右手に集結させる。
小さな球になった輝きを、ミシャは、スっと柔らかく握りしめた。
すると、輝きは、ミシャの腕をつたって、
ミシャの奥へと注ぎ込まれた。
「ぁっ――」
「そんな……」
隊長クラスの面々は、声にならない声を漏らす事しか出来なかった。
あまりに突然の陣形崩壊。
食い込まれ、なぎはらわれる。
痛みを感じるヒマもない、光速の暴力。
嵐は嵐を呼んで、より凄惨な暴風となる。
――ミシャは、止まらない。
優雅に、邪悪に、
ただ、ただ、少年・少女たちを蹴散らしていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます