芝居?

芝居?


「お前を……死なせたぁないから……悩んでんねやろぉ……投げだすことができへんから……苦しんどるんやないか……それやのに――」


 と、そこで、

 ジュリアは、トウシの胸倉をつかんで、




「間違いなく、全員に『届いた』わ……あんたの言葉」




 この場にいる全員に聞こえるような声量で、そう言ってから、


「だから、もういい。見苦しいから、その汚い水を止めろ」


 そう言われて、


「……」


 トウシは、


「……あ、そ」


 そう言ってから、

 スっと顔をあげると、

 ピタっと涙を止めて、


「……余計な仕事をやらせてすまんかったのう……」


 そこで、トウシは、自分の胸倉を掴んでいるジュリアの手をどかして、


 身なりを整えてから、

 全員に視線を向けて、


「まあ、と言う訳で……ワシ一人では抱えきれん。『ミシャンド/ラ』と『神様』を倒す方法はワシが考えるとして……問題は、前哨戦の『VS 30000』の方や。そっちで、ワシは力を貸せん。当然やろ? そのあとで、ワシはミシャンド/ラとデスマッチせないかんからのう。無駄に体力を削るわけにはいかん」


 そこで、ようやく、全員が気付いた。

 トウシとジュリアの意思。

 伝えたかった事。


「お前らの力がいる。全員の意識の改革が必要や。ワシに頼んな。今回は、お前らのオモリはできん。自分の身は自分で守れ。というか、むしろ、ワシが『ミシャンド/ラと万全の状態で闘えるよう』に手を貸せ。そうやないと、勝てんで」


「「「「「「……」」」」」」


「返事せぇや。ワシはお前らのオモリをする気はないけど、一応、リーダーなんやろ? リーダーの訓示をシカトって、どういうことやねん」


 そこで、

 岡葉がハっとしたような顔になって、


「全員、わかったな! トウシくんがいないボクら90人で、30000を叩き潰さないといけない! トウシくんの言うとおり、意識改革が必要だ! 『トウシくんがいるから大丈夫』という精神状態じゃダメなんだ! トウシくんと一緒に! 戦うんだよ!!」


 岡葉の発破に、全員が、


「「「「「おおお!!」」」」」


 と、腹の底に響くような返事をした。


 それを見たトウシは、

 満足そうにうなずいて、


「ワシは、少し、独りでミシャンド/ラの対策を考える。さっきの闘いで、あいつの弱点は少しだけ見えたから、どうにかなると思うけど、まだ詰め切れてないから、時間をもらう」


「弱点をみつけた?! あの短時間で?! それは、いったい――」


「まず、ジャミが10人束になってもどうこう言うとったけど、あれは完全にただの嘘や。あれは、こっちの心を折りにきただけのただのブラフ。その証拠に、ギリギリやったけど、あいつの動きは見えとった。あいつを油断させるために、まったく見えてないフリをしてやったけどな」


「さ、流石、トウシくん! そ、それで、ミシャンド/ラの弱点というのは、具体的に?」


「ワシらの会話、どっから聞かれとるかわからへんのに答えられるか」


「……流石、慎重だね」


「ほな、わしは別室におる。なんかあったら声かけぇ」


 そう言って、講堂を出ていくトウシ。

 当然のように、その後ろをついていくジュリア。


「流石、トウシくんだ……全てが計算づくとは」

「一瞬、本気で崩壊したのかと思ったけど、流石にそんな訳ないか」

「トウシくんがそう簡単に壊れるだけないだろ」

「おい、それより、俺たち自身が強くなる方法を考えないと。トウシくんがいかに凄くても、さすがに、ミシャンド/ラの対処で精一杯だろうから、30000の携帯ドラゴンは、マジで俺達で処理しないと――」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る