第一席。

第一席。


「お前が一番使える道具である限り、お前の願いが最優先。けど、お前より使える駒が寄ってきたら、その時は、そいつを使う。それに文句を言われる筋合いはない。ワシは別に、お前の願いを叶える道具やない」


「……はい、理解しています。甘える気はありません。一生懸命、頑張って、あなたの力になります」


 などと会話していると、

 ステージに立った選抜メンバーが、

 エクストラステージへの参加を表明した。


 それを受けたアダムは、


「了解した。では、さっそくエクストラステージを開始する。お前たちが挑戦する相手は、こいつだ」


 パチンと指を鳴らすと、

 奥の扉が開いて、扉の向こうから、






「九華十傑の第一席、ジャミ・ラストローズ・B・アトラー」






 おそろしいオーラを放っているイケメンが登場した。

 凄まじく端正な顔立ちと、迸(ほとばし)る覇気。




 そんなジャミのオーラに気圧された板瀬が、アダムに視線を向けて、


「お、おい! 九華って、確か、あんたが言っていた、『今の俺達じゃ絶対に勝てない別格の敵』じゃねぇのか?」


「その通りだ。よく覚えていたな。えらい、えらい」


「……」


「エクストラステージのルールを説明する。まず、お前たちの携帯ドラゴンに、トランスフォーム機能を貸しあたえる。このエクストラステージの間は、自由に使っていい。良かったな。ただし、降参はなし。死ねば負け。タイムリミットは10分。以上だ。それでは、スタート」


 そう言って、その場から姿を消したアダム。


 アダムが退場したのを確認してから、

 圧倒的なオーラを放っているジャミが、

 五人の中学生を見渡して、


「子供をいたぶるのは趣味じゃないが……しかし、それが主の命令とあらば、喜んで『私の一番の趣味は子供をいたぶることです』と叫んでみせよう。……トランスフォーム」


 言いながら、自身の携帯ドラゴン『ラストロ』と融合するジャミ。


 携帯ドラゴンを纏ったジャミは言う。


「本来、君達相手にトランスフォームを使うのは禁止なのだが……このイベントでは、むしろトランスフォームを使うようにという指示を得ている。さあ、それでは、絶望を始めよう」







 ★







 ――闘いにはならなかった。

 ジャミは、あまりにも強すぎた。

 その光景は、ほとんど、プロの格闘家と乳幼児が闘っているようなものだった。


 手も足も出せず、ただ、ボコボコにされていく板瀬たち。

 板瀬達は、全員、躊躇なくトランスフォームを使い、ドラゴンスーツをまとっていた。

 体が驚くほど軽くなって、

 人の限界など遥かに超えて、

 ――しかし、


「こ、このヤロォ! ふざけんな! なんだ、その反則みたいな強さぁ!」


 殴りかかるが、ペシっと弾かれて、

 気付けば地面を舐めていた。

 どうして、自分がうつ伏せの状態になっているのか理解する事すら出来ない。


 ジャミは、そこから、板瀬の背部を踏みつける。


「ぐはぁあ!」


 トランスフォーム機能を使っていると、単純に、携帯ドラゴンの性能がアップする。

 そして、携帯ドラゴンを単独オートで闘わせている時よりも、スーツ状態にしてコントロールした方が圧倒的に強い。


 だが、その代わり、ダメージを受けた際、マスターがその痛みをモロに受けてしまう。

 そのため、


「解除だ! 解除する! トランスフォームはもういい! なにをしてもこの『ジャミ』ってヤツには勝てない! だから、もういい! 解除するから! だから、携帯ドラゴンだけを殺してくれ! このまま殺されるより、光の粒になって死ぬ方がいい! そっちの方が遥かに楽だ!」


 そう叫ぶが、


「残念ながら、君たちが使っている貸し出し用のトランスフォームは任意解除できない。というわけで続きだ」


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