神の思惑。

神の思惑。



 トウシたちへの説明を終えて中枢に戻ってきたセンに、シューリが、


「さっきのガキ、マジで殺したんでちゅか?」


 その問いに対し、

 センは渋い顔になって、


「なわけねぇだろ。単純に強制送還だ。携帯ドラゴンが敗北したら、元の世界に戻る。それだけ。……そもそも、あの茶髪は、俺が、『さっきの演出』のために雇った役者だし」


「ふーん……ちなみに、なんで、殺すって嘘つくんでちゅか?」


「タナカトウシの全力が見たいからだ。……限界まで引っ張り上げた上で……『ゼン』と闘わせる、そして、キッチリとゼンに勝利をおさめさせ、ゼンを通して、『タナカトウシに折られた』という過去を殺す」


「ガキの頃の因縁を未だにひきずっているだなんて……ちっさい男でちゅねぇ」


「うっせぇ、ボケ」


「ちなみに、なんで、学歴の高いガキばかりを集めたんでちゅか? 第一アルファ人のスペックの高さは、第一アルファで無能であればあるほど高いのに」


「確かに、個体値の高さだけで言えば、『バカ』や『運動オンチ』の方が上だ。そっちの方が、『高位のスキル』を持っている可能性は高い。しかし、やっぱり、『ただのバカ』はダメだ。どれだけ有用なスキルを持っていても、『資質を生かす頭』とか『資質を磨く根性』がないと使い物にならない」


 個体値しか高くない厨パなんざ、ガチ勢にとっては、ただのカモ。


 閃壱番(せんえーす)と蝉原勇吾を比べた場合、『総合評価』では『閃壱番』の方が上になるが、

 それは、閃壱番の根性がハンパないから起こっている奇跡の逆転現象でしかなく、


 『個体値だけ高い、ただのバカ』と『蝉原勇吾』を比べた場合、

 『結果的』には、蝉原の方が『圧倒的に優れた存在』になれる。


「俺はバカで無能だが、根性だけは自信がある。根性があれば、最低限の勉強はする。最低限の勉強さえしていれば、最低限の知性は保てる。所詮、頭の良さってのは、頭に詰め込んだ『知識の量』で決まる。考える材料がなければ、思考はできず、思考した回数が、そのままイコールで知性になるからな」


 使ったぶんだけ『脳力』は高くなる。

 脳力が高ければ高いほど、質の高い思考を、高速回転で行える。

 『質の高い高速思考』の『施行回数』が、その者の『知性の底値』となる。


 『尖った上』を目指すなら、『産まれ持った有能さ』というブーストが不可欠だが、

 『器』だけなら、根性しだいで、誰でもつくれる。


「今回、このゲームに召集したのは、ハンパじゃなく努力ができる知性の高い連中。だから、当然、学歴等は高くなる。学歴は意味がないというやつがいるが、対象者の『底』を判断するだけなら、実際のところ、学歴は何よりも有用だ。少なくとも、努力できるやつか、できないやつかが分かる」


「なるほど、つまり、あんたは……あいつらを、『使い潰す気はない』ってことでちゅね」


「……」


「まさか、あのガキどもを、ゼノリカに入れようってんじゃないでちゅよね?」


「それは違う。しかし……」


「しかし、なんでちゅか?」


「第一アルファにも、ゼノリカみたいな組織があればいいなとは……常々思っていた」


「……」


「どうやら、携帯ドラゴンの力は、マナを使わないせいか、限定的ではあるものの、第一アルファでも使えるっぽい。携帯ドラゴンの力があれば、世界の管理者たりうる」


「……」


「だからこそ、選別は慎重に行う必要がある。バカではダメだ。未来を演算できる者が必要。となれば……やはり、タナカトウシが適任だと、俺は思う」


「あのガキのこと、ずいぶんと高く買っていまちゅね」


「これが、『単なる思い出補正の買い被り』か、それとも『正当な評価』か……それは、このゲームでハッキリする」


「なるほど、それが本当の目的ってわけでちゅか……なんていうか、お兄って、ほんと、『対外的』には『傲慢・奔放』に見せてまちゅけど、実のところは『アホほどの気ぃ使いぃ』でちゅよねぇ。そういう、色々な事に気配りし続ける生き方ってしんどくないでちゅか?」


「………………もう慣れたよ」


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