神の王モンジン。

神の王モンジン。


 岡葉との情報交換を終えたあと、

 トウシは、MDデバイスで、ここにいる100人の携帯ドラゴンのスペックをチェックしていた。


(まあ、だいたい、強化値50くらい……強いヤツで100前後……あの岡葉とかいうオカッパの携帯ドラゴンは、95……この中では最上位クラス。岡葉が言っていた鈴木ホウマと佐藤ツカムとかいう二人も、90オーバーと、相当強い……けども……)


 そこで、トウシは、自分の携帯ドラゴンのスペックをチェックし、


(ワシのと比べたら屁ぇみたいなもんやな……てか、ワシのが強すぎる……なんや、この規格外の強さ……この、ソンキーっていうキャラパーツ、もしかして、大当たり中の大当たりなんか? それを一発で当てるとか……ワシの運命、ほんま大丈夫か……めっちゃ不安になってきた。ワシの優秀さが引き当てたっていう事なら、まあ、それはソレでエエんやけど、もし、ただの激運やったら、これ、ヤバ――)


 などと、心の中でつぶやいていると、


 そこで、


 キーンコーン、カーンコーン


 と、飽きるほど聞いてきた例の音がして、


 直後、奥のステージに『小さな太陽』が出現した。

 それは、まるで絵に描いた太陽みたいで、直視すると目が潰れるという類のものではなかった。

 凄まじく明るいけれど、刺すような光ではなく、すべてを包み込むような輝きだった。


 この場にいる全員の注目を集める小さな太陽。


 その『小さな太陽』の上に、腰をかけた状態で、

 『おそろしく高価そうな羽織を着た、17歳くらいに見える青年』が現れ、





「俺はモンジン。神の王だ。よろしく」





 その快活な自己紹介を受けて、

 この場にいる100人くらいの少年・少女は、心の中で様々な事を思った。


(……神の王……ねぇ)

(どんな自己紹介だよ……)

(まあ、確かに、オーラはすごいな……)

(神様、若っ……普通、神様っていったら、白いヒゲとか生やしている老人タイプじゃないの?)

(神か……神にも色々あるかなら。……デンデタイプかそれとも全王タイプか……)



「頭のいいお前らなら、言わなくても分かると思うけど、一応、全部、丁寧に説明しておく。お前らをここに呼んだのは、俺主催のデスゲームをやらせるためだ」



(どわぁ……デスゲームやらされる系かよ……)

(やっぱ、そうかぁ……『ここまでの流れ』と『雰囲気』的に、『そうじゃないかなぁ』とは予想していたけど……ガチだったかぁ)

(マンガとか映画ではよく見る状況だけど……マジで自分の身におこるとは)

(この神様、全王タイプだったか……最悪……)



「俺は、今日、ここに、日本の中学生を『3万人』ほど呼んだのだが、チュートリアルを突破できたのは、お前ら100人だけだ。お前らは素晴らしい。どいつもこいつも、非常に優秀!」



 その発言を受けて、岡葉が、


「生き残ったのは100……じゃあ、残りの29900は……」


 という疑問をなげかけた。

 すると、モンジンは、ニィっと黒く笑って、


「当たり前だが全員死んだ。弱いやつは死ぬ。それが自然の摂理」


「ひ、ひどい……」

「ひどい? なにがだ?」


「あんた、命をなんだと思っているんだ」

「俺の所有物」


「……」


「俺のモノを俺がどうしようと、俺の勝手。そうだろう?」




「「「「「「……」」」」」




「はい。というわけで、これから、みなさんにやってもらうゲームの説明をしまーす」


 神の王モンジンは、ニッコリと微笑んで、


「みなさんには、これから、あのタワーの攻略に挑んでもらいまーす。じゃじゃーん」


 そこで、モンジンの後方に、巨大なタワーが出現した。

 天高くそびえたつ、大きな塔。


「最上階の9999階に辿り着く事! それが君たちの最大の目標でーす」


「きゅ、9999……?」


「そう。一番下の1階から、一番上の9999階まで登り切ること。それが、このゲームのクリア条件。簡単だろう?」


「クリアしたら、生きて帰れるってこと……ですか?」

「はい、正解! かつ、クリアできたら、俺がなんでも願いを叶えてやろう」


「なんでも……」


「ああ、なんでもだ。『世界征服』でも『永遠の命』でも『これから地球にやってくるサイヤ人を倒してほしい』でも、なんでも叶えてやる」


「あんたは、シェンロン以上の力を持っているのか……」


「比較される事すら腹立たしい」


「……すげぇ自信……」

「さすが、神の王……」



「仮に、シェンロンの力を1とした場合、俺の力は1兆をかるく超えている。どうだ! 俺、マジでヤバくね?! ハンパなくね?!」



(とたんに、ただのイキっている高校生に見えてきたな)

(……あれ、自信があるんじゃなくて、頭が小学生なだけじゃ……)

(大丈夫か、あのニーチャン)


 と、そこで、


「一つ質問です。生きて帰る方法は、それだけ……ですか?」


 とある女子生徒が、そう質問した。

 すると、神の王は、ニっと笑って答える。


「いや、他にも一つある!」

「それは?」




「俺の携帯ドラゴンを殺すことだ」

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