新たな扉。

新たな扉。




「……な、なんだ……あのでかい扉……」



 いぶかしげな顔をしているゴート。

 その横で、リーンは、ゴートの視線を追うが、


「でかい扉? どれのことを言っている? 大きな扉など、ワシの目には見えんが?」


「……なに? 正気か? あんなデカ……」


 そこで、ゴートは、自分の目の事を思い出す。




(まさか、あれが、『いままでは見えなかったもの』……か?)




「ラムド、やはり疲れているんじゃないか? 今日はもう休め」


「ん……ぇと……ぁあ……うーん……」


 そこで、ゴートは、数秒だけ悩んだが、


「うん、そうだな。お前の言うとおりだ。ちょっと休暇をもらう事にする。その休暇を利用して、探検に出かけるとしよう」


 そう言って、ゴートは、扉に向かう。


「ぉ、おい、ちょっと待て、ラムド。何を言っている? ほんとうに、頭、大丈夫か?」


 扉に向かっているゴートの後を追うリーン。


 扉の目の前まできたゴートは、



(さて……この中には、何があるのかなっと)



 ワクワクしながら、


(テプの大当たりで見えるようになった扉だからな……おそらく、中はスーパーボーナスステージ……ザックザクの財宝か……それとも、特別な力か……)


 扉を開こうと、手を押しあてた。

 すると、その巨大な扉は、ギギギっと音をたてて、ゆっくりと開く。

 カギがないと開かないなんて事はなかった。


 中を覗き込んでみるが、黒いモヤがかかっていて、奥は見えなかった。


(……慎重にいくべきか? もしかしたら、フッキ級のバケモノがいるかもしれねぇ……いや、それはないと思うが……まずは、準備を……準備って何をだ? ……もし、ここがボーナスステージだったらどうする? もし時間経過で消失したらどうする? 奥に、フッキを倒せるアイテムがあるかもしれねぇぞ……)


 と、ゴートが、数秒、グルグルと頭をまわして悩んでいると、


 ふいに、扉の奥から、


 ズォオオ!!


 っと、吸引力がハンパない掃除機の吸い込み音のようなものが聞こえて、

 直後、ゴートとリーンの二人は、


「うぉおっ! げっ!」

「ぇ?! なに? ちょっ、ラムド!!」


 扉の中へと吸い込まれた。

 それは、一瞬の出来事だった。




 ★




 扉の中は、あまりにも異質だった。

 ここにタイトルをつけるとするなら、『大魔王の城』が最も相応しいだろう。


 RPGの勇者が、最後の最後に辿り着く最果て――そんな『雰囲気』がある場所だった。


 荘厳で、優美で、けれど、どこか、おどろおどろしい。

 そんな場所。


 ゴートは周囲に視線を向けてみるが、『元の場所に戻るための扉』は見つからなかった。

 そして、


(……確か、あの時、リーンも一緒に吸い込まれたはず……なのに、見当たらないのは、どういうことだ?)


 どこにもリーンはいない。


(UV1に関しては、この扉に吸い込まれる時、接続が切れるのを感じた……ほぼ確実に、UV1は、ここにいない。だが、リーンは……おそらく、ここに引きずり込まれている……)


 あくまでも感覚の話でしかなく、それが事実かどうかは分からない。

 だが、


(いそいで探さないと……)


 こころの中でそうつぶやきながら、ゴートは、リーンの行方を捜索する。

 気配を探ったり視界を広げたりする類の魔法が、なぜか一切使えないので、自力で走り回って探すことになる。



 その途中で、

 『薄羽の生えた中型犬サイズの大きなサソリみたいなの』が、

 ブブブっと音をたてながら、ゴートの頭上まで飛んできた。



 その虫を見て、ゴートは、


「なぁ?!」


 固まった。



 血の気が引く。

 その虫の存在値は、

 信じられないことに、


 『100000000000(1千億)』を超えていた。





【後書き】

次話、ひさびさに、宇宙一のヤクザが登場!!

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