カジノ殺し。

カジノ殺し。



 カジノに辿り着いたセンは、きらびやかなカジノの外観を見ながら、


「きたぜ、ヌルリと」


 ボソっとそうつぶやいてから、


「1000MDPさえあれば、CMDPチップが買える! つまり、勝負できる。ふふん。カジノよ。貴様に、絶望を教えてやる。――ウチの師匠がなぁ!」


 黒く微笑んで、


「というわけで、姉さん、おなしゃーす」


 腰を90度に曲げて、シューリに丸投げするセン。

 そんなセンの姿を見たシューリは、


「あー、なんだか、肩がこりまちたねぇ」


 言いながら首をまわす仕草をとった。

 センは、ひきつりながら、


「へ、へへへ、姉さん、これでどうでやすか」


 シューリの背後にまわり、彼女の肩を揉み始める。

 センの献身を受けて、シューリは、まんざらでもない顔で、


「悪くないでちゅね」

「光栄でげす」


「ま、よくもないでちゅけどねぇ。お兄は、マッサージの才能も当然ゼロでちゅから」

「……くっ、この脳漿炸裂女がぁ……」


「ん、何かいいまちたか?」

「いえ、なにも……ただ、『女神様の肩を揉ませていただけている』という事実に感涙しているだけでございやす」


「本当にお兄は、史上最高に幸運な男でちゅねぇ。オイちゃんの美しい肩を揉める男は、世界広しといえど、お兄くらいでちゅよ」

「ですよねー、あはは」


「あー、なんだか、喉がかわきまちたねぇ」

「少々お待ちを」


 そう言いながら、アイテムボックスから、シェイカーセットやフルーツ等をとりだし、即席で、シューリの好みドンピシャのカクテルをつくり、


「こちらでよろしいでしょうか、世界一麗しい女神様」


 うやうやしく献上するセン。


「色味が悪いでちゅねぇ。腕の悪いバーテンでちゅ」

「ぐっ……このアマ……オホンッ…………さ、さて、姉様……そろそろお仕事の御時間で――」


 そんなセンの言葉を、

 シューリは、優雅にカクテルを喉に流してから、軽やかに遮って、


「あー、なんだか、永遠の服従を誓う世界最強の奴隷が欲しいでちゅねぇ」

「調子にのんな! この腹黒女神が!」


 ついにキレてしまったセンの横で、

 アダムが、


「シューリ、いいかげんにしろ。見るに堪えん。貴様以外が同じ事をやったら万回八つ裂きにしても足らん所業だ」


 鬼の表情でシューリを睨みつけてそう言った。


「この程度の奉仕じゃ、全然モノたりないでちゅけど……まあ、いいでちゅ」


 そう言うと、シューリは、


「さあ、行きまちゅよ」


 ズンズンとカジノの中へと入っていった。


 中は、外観以上にギラギラしていた。

 ネオンで目がやられそうなほどの派手な装飾。


 シューリは、

 入口付近にある換金所で1000MDPをコイン1枚と交換した後、

 迷いなくルーレットに直行し、


「じゃあ、赤の7に1000」

「赤の7だな。了解」


 当たり前のようにオールベット。

 シューリの神託を受けたセンは、虎の子の『コイン1枚』を、迷いなく、赤の7にセット。


 ディーラーのお姉さんがゲームを開始すると、

 彼女の手から放たれた小さなボールが、シュゥゥゥと音をたてて円を描く。

 ある程度まわったところで、減速し、

 ついには、カンカランと乾いた音をたて、




「RED7!! 素晴らしい! おめでとうございます!!」




 アッサリと、当り前のように『大当たり』を出して見せる。

 ディーラーが、大量のコインをこちらに差し出してきた。


 その光景を見たセンは、

 歪んだ笑みを浮かべ、


「さっそく、36000MDPゲェット! げひゃひゃ! こっちには、カジノの天敵、幸運の女神がついてんだ! ついてるっつぅか、幸運の女神が直にプレイしてんだ! 負けるわけがねぇ! てめぇらは死ぬ! 絶望を数えながら死に狂う! げひゃひゃ」

「とても『命の王』とは思えないゲスさでちゅねぇ」


 呆れ顔のシューリの言葉はシカトして、

 センは、そのままウハウハ顔で、


「さあ、姉上! 続けて、GO、GO! 次は、上限いっぱいの3万でいきやしょう!」


 自重を忘れた神々の暴走。

 シューリも、ここで止まる気はないようで、


「じゃあ、黒の8に30000で」


 迷いなく、『36倍に賭けられる上限一杯』である『3万MDP(黒か赤にかけ場合は500が上限)』を投入する。


「黒の8でげすね! 了解でやんす!」


 そう返事をして、センは、ディーラーから受け取った1万用のコイン3枚をベットした。


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