配布される、携帯ドラゴンの卵。

配布される、携帯ドラゴンの卵。


 全員がまんべんなく戸惑っていると、



「これから、君達一人一人に、『携帯ドラゴン』の卵を渡すから、受け取ってね」



 ナビゴンが小さな指でパチンと音をならすと、

 受験生たちの手の中に、小さな卵が出現した。


 センは、手に入れた卵を、ほとんど反射的に魔法で解析しようとしたが、


(なんも見えねぇ……)


 完全な情報規制がかけられている『その卵』は、

 センの手の中に出現してから、数秒もしないうちに、ピキピキと音をたてて、


「きゅいっ!」


 と、元気な『子猫サイズの龍』が産まれてきた。

 割れた殻は、手の中でもぞもぞと動き、


(うわ、キモ……)


 スマホ型のマジックアイテムになった。


(手のりサイズの龍と、スマホ……世界観が急に崩れたな……)


 てのひらサイズのその小さな龍は、背に生えているかわいらしい『小さな翼』でヒョイと飛び上がると、センの胸の中にとびこんできて、


「きゅい、きゅいっ!!」


 と、ハチャメチャになついてきた。


(完全に携帯ドラゴン……『ガキの頃にやっていたスマホゲー』と『同じ世界観の試験』とは……また、妙な展開になってき――つぅか、すげぇ懐くな、こいつっ)


 『全員そうなのかな』と思いながら、周囲を見渡してみたが、

 他の連中の龍は、特にそうでもなかった。

 だいたいの龍は、『なんだかわからない』というキョトン顔をしているばかり。

 いかにも『産まれたてっ』といった感じの態度の龍ばかりだった。


(俺の携帯ドラゴンだけ、妙にアクティブ……)


 などといった感想を抱きつつ、手の中のスマホ型マジックアイテムを操作する。

 どうやら、所有しているだけで、簡単な使い方が頭の中にインストールされるタイプらしく、操作に困る事は何もなかった。


(これで強化していく感じか……ステの確認でも出来るようだな……ステ確認がアイテム頼りとか……なんか、懐かしいな……)



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 登録名 『??』

 型番  『IS=GPQC/タイプD95775‐GX9』


 《強化値》    【1%】

 《容量》     【200】


 [HP]     【1%】

 [MP]     【1%】


 「攻撃力」    【2%】

 「魔法攻撃力」  【1%】

 「防御力」    【1%】

 「魔法防御力」  【1%】

 「敏捷性」    【1%】

 「耐性値」    【1%】



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(完全な初期モデル……ちょっと期待していたんだが、どうやら、俺がやっていたスマホゲーのデータが使えるとかではないようだな……)


 などと思っていると、

 そこで、ナビゴンが、


「さあ、まずは、みなさん、ご自身の携帯ドラゴンに名前をつけてあげてください!」


 何が何だか分からないまま、

 しかし、みな、とりあえず、

 言われた通りに、携帯ドラゴンへ名前をつけていく。


 当然、センも、


「名前ねぇ。この携帯ドラゴンには名前をつけられるのか……ふぅん……スマホゲー版とは若干ちがうんだな……」


 ※ 携帯ドラゴンというスマホゲーでは、最初にマスターの名前は登録するが、携帯ドラゴン自体に名前をつける事はなかった。心の中で勝手に名前をつけている者は大勢いたけど。もっといえば『携帯ドラゴンに対して名前をつけるシステムをつけてほしい』というリクエストは、運営に山ほど届いていた。だが、頑として、携帯ドラゴンに名前をつけるシステムは採用されなかった。

 その理由は――



「じゃあ……モンジンで」



 と、センが、テキトーに『愛用している偽名(ゲームをする時は、たいがい、モンジン。スマホ版の携帯ドラゴンの時のマスターネームもモンジンだった)』をつけようとしたところ、携帯ドラゴンは、センに対して、くるっと背中を向けた。

 そして、携帯ドラゴンの背中からペカーっと表示されるエアウィンドウに、


『その名前は使用できません』


 という表示が出た。

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