さて、ニーチャン、どっちか選べ。

さて、ニーチャン、どっちか選べ。


「力だけではなく、全てが優れている命の王……ぁあ、本当に美しい……この上なく尊い、私の主……」


「……お前だけの主じゃねぇよ。俺達全員の上に居(お)られる神の王だ」


 最後に、神への賛美を述べると、

 二人は、瞬間移動で、その場を後にした。


 後に残されたピーツは、


「ふぅ……」


 溜息をつきながら、木にもたれかかって、うずくまり、


(あくまでも推測に過ぎないが……どうやら、ラムドってのは、あいつらの『組織』に所属しているっぽいな。所属っていうか、ただの末端? よくわかんねぇ……ほんと、あいつらは、なんだったんだ? 俺の想像力で予測できる範囲だと……『世界の裏に潜み、世界の全てを裏から牛耳っている秘密結社』とか……『神の世界から派遣された天使』とか……『異星や異世界からの侵略者』とか……そんな感じ? んー、よぉわからんけど……あいつらは、とにかくヤバいな……『ラムドを倒す』っていうのは、ようするに、あいつらにケンカを売るっていうこと……もしかして、ソルは、そこも含めて、俺に『ラムドを倒せ』っつったのか? おいおい、勘弁してくれよ……)


 そこで、ピーツは天を仰ぎ、


「つぅか、調べられたらヤバくね? ……あいつらが言っていた、存在値2000前後の反応って、完全に俺だろ……どうしよう……古龍殺しチームを皆殺しにして口封じしようかな……って、いや、ダメだろ……なんで、そんな発想になった……その道を選択するくらいなら、自殺するわ……けど、じゃ、どうする……」


 などと、ブツブツと呟いた、その時、






「ほう、お前が反応の正体か」

「信じられない……虫ケラの反応でしかないのに……」






 後ろから声をかけられて、

 ピーツはビクゥっと体を震わせた。


 そぉっと振り返ると、ピーツがもたれかかっている木の左右で、先ほどの二人が、腕組した状態で、木に背を向けて、優雅に立っていた。


「ぁ……えと……」


「さて、少年。質問だ。今死ぬか、後で死ぬか、どっちがいい?」

「あんたの人生における最も重要な分岐点。心して答えなさい」


 ※ 『ピーツが隠れている事』は『最初』からバレていたが、

   しかし、『現状』でも、『携帯ドラゴンのステルス』はバレていない。

   携帯ドラゴンに用いられている技術は、かなりの異端。

   もちろん、『オーラを放出しながら』や『闘いながら』だと、看破されてしまうが、

   息を殺して、ステルスに集中していれば、神の目も誤魔化すことは可能。


 ※ ちなみに、古龍殺しの経験値は、すべて、携帯ドラゴンに注がれており、

   ピーツのレベルは現在も初期状態のまま。



 バロールからの質問に対して、

 ピーツは、おずおずと答える。


「……で、できるだけ、あとの方で死にたいです」


「なら、正直に答えろ。ここで何があった? お前は何者だ?」


 そこで、ピーツは、頭をフル回転させた。

 どう答えるべきか。

 必死に悩んだ末に、


「俺は……フーマー大学校に通う一年生です。ピーツと申します。成績は下の下で、でも、龍試は突破したので、最下位ではなくなったかと……あ、でも、まだ、冒険者試験という本戦が残っているので、いまのところは、まだまだ最下位――」


「余計な事はいい。端的に話せ」

「ここで何があったか、それを簡潔に」


「こ、ここで何があったかと申しますと、えっと……あの……ですね……その……」


「ほう。隠匿(いんとく)を選択するとは、なかなか勇気がある」


「え、いやいや、違う、違う! ちょっと複雑で、どう言えばいいか、すぐには纏まらなかっただけで……もちろん、答える気はありますよ、もちろん、ええ、もちろん! 敵対する気とかゼロ! 本当にゼロ! まだ死にたくない!」


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