壁の分厚さ。

壁の分厚さ。



「超神……だったか? 神を超えた神……あの時のミシャンド/ラ陛下は、凄まじかった……自分があの領域に辿りつけるとは、現時点だと、まったく思えない」


 バロールがボソっとそう言うと、


 そこで、カティが、

 頬を赤らめて、天を仰ぎ、


「主は、あの領域をも遥かに超えた場所に居(お)られるんだよね?」


「当然だろう。もっとも、どのぐらい遠いかは、ちょっと分からないが」


「主は、あのクソバケモノを滅せられた時の変身で、確か、『究極超神化7』と仰っていた……もし、超神化の上が、究極超神化で、その上が究極超神化2だとしたら……」


「われわれ(神)とミシャンド/ラ陛下(超神)の間にある壁は凄まじく高い……もし、一つ一つの壁が、同じくらい高かった場合……主は、それほどのとんでもない壁を七段階以上超えられた高みにおられるという事になるな……」


「同じくらい高かった場合……か」


「どうした? 何か言いたげだな?」


「終理殿下は、あのバケモノとの闘いで、最終的に究極超神化5という変身技を使っておられた。つまり、5と7の間にある壁は、終理殿下と主の間にある壁という事になる……」


 二人の力量差を比較してみて、

 バロールは、


「……や、やべぇな。どう考えても、『俺らとミシャンド/ラ陛下の差』×『2』ってレベルじゃねぇぞ」


「もしかしたら……ていうか、たぶん、きっと、末尾の『数値』が上がれば上がるほど、『超えなきゃいけない壁』は分厚くなっていくんだと思う……」


「そんな『厚くなり続ける壁』を、何段階もぶちぬいた先におられるのが、我らの主か……ほんとうに……いつまでも、ずっと……『理解するほど』に遠くなられる御方だな……」


 遠くを見ながらそう言ったバロールを観察しながら、

 そこで、

 ピーツは、



(……『みしゃんどらへいか』……『しゅーりでんか』……そして、『しゅ』……)



 バロールとカティが口にした者の名を、心の中で反芻し、


(あの二人の会話の内容から察するに、その『妙な名前の三人』は……あそこにいるヒソカ二人より遥かに強いってことになるが……ぃ、いやいや、嘘だろ? それ、どんな最悪? もし、あいつらの会話がマジだったら……俺ごときが神になるとか、余裕で不可能……つぅか、俺なんて、ほとんど虫みたいなものじゃねぇか)



 と、そこで、

 バロールのもとに、


「ん……ぁあ、大丈夫だ」


 下からの連絡が入り、


「……そうか……わかった」


「どうかした?」


「ドナからの報告だ。UV1からの定時報告で、ラムドが、戦争に備えて、南大陸全域の制覇にのりだしたとかどうとか……」


「……つい、『すげぇ、どうでもいい』とか思っちゃったけど……それも、一応、私達の仕事だったっけ」


「……おい、こちらのミッションでも気をぬくな。まだ我々は、『悪』を知りつくしていない。『途方もない邪悪((D型))』との闘いにそなえるという意味でも、ラムドを使った仕事では手は抜けない」


「ああ、そっか、ごめん……うん、そうだよね。『ラムドを使ったミッションを遂行することで、我々は悪を知り、邪悪との闘いで有利に事を運ぶ事ができる』となれば、確かに、手を抜く訳にはいかないわね」


「気付けば、全てが繋がっている。主は、最初から、全てをみこしていたのだ。主の一手、一手には、深き意味と価値がある」


「力だけではなく、全てが優れている命の王……ぁあ、本当に美しい……この上なく尊い、私の主……」


「……お前だけの主じゃねぇよ。俺達全員の上に居(お)られる『神の王』だ」



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