あらたな決意。

あらたな決意。


 ビリビリと膨れ上がっていくエネルギー。

 その力は、



「――ひぃい!――」



 古龍を下がらせた。

 原始的な生存本能を刺激された古龍は、


「――ひゃ、ひゃああああ!――」


 悲鳴をあげながら、あわてて翼を広げ、逃げようとする。


 飛び去っていこうとする古龍の背中に、


「よくも、俺の先輩をいじめやがったな。逃がすわけねぇだろ、ぼけぇ」


 右手をロックオンして、



「ディザスター・レイ」



 先ほどの古龍の照射とはレベルの違う強大な照射を放つ。

 空間を食い殺すようなエネルギーの暴走。

 容赦なく駆け抜けていく光の渦(うず)。




「――ギャァアアアア――」




 照射に飲み込まれ、瞬殺された古龍。

 後には、チリ一つ残っていなかった。


 その様子を見ていたカルシィたちは、



「「「……」」」



 そろって唖然としていた。

 自分たちがまったく相手にならなかった古龍を一撃で倒した『その強大すぎる力』に、ただただ呆けてしまう。


「ん……おっと、解除されちまった……使える時間、短ぇ……」


 ディザスター・レイを撃った事で、エネルギーがつきてしまったのか、トランスフォーム状態は解除された。


 元の『重たい自分』に戻ったピーツは、

 自分の両手をニギニギしながら、


「うわぁ……変身が解けた瞬間の倦怠感、ハンパねぇ……」


 そこで、ピーツは、ボーレの方に振り返って、


「なあ、ボーレ、トランスフォームの魔カードって他にないの?」


 そう声をかけると、ボーレは、実につまらなそうな顔で、


「一枚しかねぇよ、あんなレアアイテム……ていうか、なんで俺は使えなくて、お前は使えるんだ……くそ……」


 ブツブツ言っているボーレと、


「マジかぁ……」


 と、嘆いているピーツ。

 どうやら、たったの一回の変身で、既に中毒になってしまったらしく、


(あの万能感と高揚感……もう一度、味わいたい……)


 『力』の虜になるピーツ。

 目の奥を燃やし、


(絶対に見つけてやる……トランスフォームの魔カードは、たぶん、他にもある……学校中をさがしまわって、必ず見つけてやる……)


 一世一代の手柄を奪われて地団太を踏んでいるボーレ。

 強大な決意を固めるピーツ、


 そんなピーツを見て、茫然としているカルシィ・ドコス・エーパの三人。

 あまりの驚愕に、最初は声も出ていなかったが、

 流石にそろそろ落ち着いてきたようで、

 おずおずと、


「さ、さっきの……とんでもない力は……いったい、なんだったんだ?」


 問われたピーツは、カルシィに視線を向けて、渾身のドヤ顔を浮かべ、


「あれが俺の、隠された秘密のシークレット・スーパーパワーですよ、カルシィ先輩」


 そこで、ボーレが、


「吹いてんじゃねぇ! 俺がみつけたレアアイテムの力だ! つまり、俺の力だ! あの古龍を倒したのは、結果、俺! いいな!」


「お前こそ、ふざけるな。確かに、あのアイテムを見つけたのはお前かもしれないが、お前、結局、使えなかったじゃないか。つまり、結果、俺の手柄! それは揺るぎない事実!」


「ふっ……ひさしぶりに……キレちまったよ……俺をここまで怒らせたおバカさんは、お前が初めてだ」


 言いながら、魔力を練りだすボーレ。

 その姿を見て、


「おいおい、やめておけ。あの古龍と同じように、消し炭にされたいのか?」


「トランスフォームはもうねぇんだよ、ばぁか。消し炭になるのはそっち――」


 と、くだらないケンカをしている二人の前に、






「特殊なアイテムを使ったとはいえ、まさか、古龍を撃退するとは……やるな、お前ら」






 教師が現れて、


「俺がガキに満点をやることはないんだが……今日だけは、ここにいる全員に満点をくれてやる。お前たちは全員、文句なく合格だ」


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