学校についていけませぇええん!

学校についていけませぇええん!



 大学校概要、補足(次の★まで読み飛ばし可)。



 最高学位の博士号を目指すとなれば、その道はおそろしく険しい。

 15年以内に800単位が最低限となると、一年で必要となる単位は最低53。

 『ある程度の秀才』でも『年に20単位取れるか取れないか』というのがフーマー大学校の難易度。

 よっぽどの天才でなければ取れない――それが、フーマー大学校の博士号という領域。




 大概の者(大学校に入れる優秀な者の中で大概の者)は、『学士』を取るので精いっぱい。

 修士まで取れるものは、学士をとれた者の中で、5分の1以下。

 博士号を取れる者は、修士号を取った者の10分の1以下。


 大学校で博士号を取るというのは、冒険者試験で合格するよりも遥かに価値がある。




 フーマー内では、『冒険の書を持っているだけの者』と、『博士号を持っている者』と比べれば、圧倒的に後者の方が優遇される。


 冒険者が優遇されないワケではないが、職場などで、

『大学校で学位くらいとってくれば? 教養がない人とは、働きたくないんですけど』

 と言われてしまう。


 ちなみに、冒険者クラスの実力があれば、学士号くらいまでは比較的余裕で取れる。

 上位冒険者だと、『3年ちょっと』という驚異的な速度で取れる。


 冒険者ですらない『さほど才能がない者』――というか『普通の優秀な者』だと、学士をとるまでに、リミットギリギリの8年はかかる。


 大学校で学士をとるのは、『第一アルファで医者になるのと似たような地獄を経験する必要がある』と認識してもらえれば問題ないかもしれない。

 解剖……生理……病理……ゥ、頭が……



 ちなみに、勇者は半年で大学校を追い出されたが、追い出されなければ、一年ちょっとで学士は取れた(前期だけで『鬼試(5単位)3つ』と『龍試(10単位)5つ』を取っていた)。




 ★


 『最も簡単な実技』でもアップアップだったピーツ。

 3限目の講義は、もはや完全にお手上げだった。

 『そもそもの難易度の高さ』と『ピーツの頭の不出来&勉強不足』のせいで、


(やべぇ……普通の解説が呪文にしか聞こえない……)


 教師の言う言葉がサッパリ分からなかった。

 一応、ピーツも頑張って勉強しようとはしていたので、1から10まで完全にサッパリではないが、


(用語理解がまったく足りてねぇ……このピーツってやつ、勉強の仕方を間違っている……よく大学校に入学できたな……って、あ、こいつ、天文学的な豪運だけで受かってやがる!)


 記憶を探ると、ピーツが合格出来たのは、完全に、『何かの間違い』というヤツだった。

 分かりやすく言うと、

 ピーツは、5択×200問の試験を、ガチ運だけで突破していた。




 ――年に一回行われる『恐ろしく難しい入学試験』をクリアした300人だけがフーマー大学校に入学できる。

 大概、250人くらいはフーマー出身者で、残りの50人はフーマー以外出身という割合になる。

 フーマー大学校に入れるというのは、フーマーで産まれた者にとっても、とてつもなく誇らしい事で、親戚からフーマー大学校に行ったという話が出たら、大騒ぎになるくらい。



 冒険者試験よりも難易度は低いと言われているが、テストの方向性がまるで違うので、一概には比べられない。

 冒険者試験は、一次・二次くらいまでは、基本なんでもありの形式で、テスト後半になればなるほど『戦闘能力』が重視されるというもの。

 それに比べて、大学校のテストは、男気溢れる『筆記一本』。

 70%以上を獲得しており、かつ、『テストを受けた者の中で、上位300位以内に入っている』という条件を満たせば、誰であれ合格(犯罪者は当然別)。


 毎年、大学校を受ける者は5000人ほどと、受ける者の数は少ないが、それは、冒険者試験と違って、『一次を突破できたらどうこう』というのがないため。

 メチャクチャ勉強した者の中から上位が選ばれるという形式のため、『俺でもワンチャンあるかも』とはなかなか思えない。


 冒険者試験を受ける者の中には、なかば『宝くじ』感覚で受ける者もいたりするが、大学校ではそうじゃない。

 勉強していない者では、ただ受験料をドブに捨てるだけになるため、受験生の数はさほど多くない。

 『実は、俺、むかし、大学校を受けた事があるんだよねぇ、ははは』という謎の自慢がしたくて受験する者も中にはいるが、そういうバカの絶対数は、やはり少ない。



「以前の講義で、マナの回帰論における精緻解法は教材に記載されていないパターンもあると教えたな。覚えているか? ……ピーツ、答えなさい」



 振られて、ピーツは、しどろもどろになる。


(口頭で教えたパターンか……なら、ノートにとってねぇと答えられないな……記憶には当然、残っていない……教科書にメモもなし……はい、お手上げ)


 そこで、ピーツは、

 隣に座っている女学生に、


「悪い、教えてくれない?」


「教えてくれる人は、あそこにいる。あの人は、それが仕事」


 そう言って、教壇に立つ教師を指さす女学生。


「いや、まあ、それはそうなんだけど」


「どうした、ピーツ!」


「ああ……ぇと、わかりません」


「なんでだ?」


「なんで……ときたか。……えぇと、忘れたし、メモもとっていないからです」


「なんでだ」


(うわー、このタイプの教師かぁ……)


 ピーツは心の中で溜息をついてから、


「えぇと、ですねぇ……」


 答え方に悩んでいると、


「貴様のような者が大学校に在籍しているという事実に目眩(めまい)がする。だから、入試は選択式ではなく、記述式にするべきだと言っているのに、まったく……やる気がないなら死ね。害悪でしかない」


(死ねときたか。流石、異世界の学校……コンプラもクソもねぇなぁ)



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