リミッター解除。

リミッター解除。



 爆発的にオーラを上昇させたミシャ。

 それを見たP型センエース1号は、

 もう一度、めんどうくさそうに溜息をついて、



「リミッターの外し方を覚えたか。はいはい、すごい、すごい」



 なおざりの拍手をしてから、


「けど、俺だって出来るんだよ、その程度のちょっとした強化技は」


 言ってから、全身にオーラと魔力を充満させていく。

 その後、ガッっと一気に存在値を上げる。


 『かなりの無理を体に強いる技なので、短時間しか使用できない』という、

 ぶっちゃけ、あまりコスパのよろしくない技。

 上位の覚醒技を覚えるとリストラされる微妙強化系。


「ミシャンド/ラ。……ちょっとした端役(はやく)でしかないくせに、主役を気取って、一丁前の顔すんな。主役は既に、ここにいる。脇役は黙って寝てろ。不快だ」


 言葉と覇気で、ミシャを折ろうとするP型センエース1号。

 なんだか、もはや、意地になってきていた。

 『力』ではなく『己の存在だけ』で、ミシャを砕こうとしている。

 そうでなければ『意味がない』とすら思い始めている。


 ミシャを折ろうと、必死に覇気を練るP型センエース1号。

 ――だが、


「私はゼノリカを支える三至天帝の一柱、邪幻至天帝ミシャンド/ラ! 貴様如きに砕かれるほどヤワじゃない!」


 そう叫んで、ミシャは、

 全身に溜めたオーラと魔力を、

 その両手に集中させる。

 掲げた両手に想いを込めて、

 そして、


「――閃光斜影のキルクルス――」


 尋常ではなく重たい魂魄を乗せた強大な一撃を放った。

 深き死の電流をまとった極邪の波動がP1を襲う。

 強大なエネルギーの奔流。

 己の『天極邪気』を限界以上に昇華させた、渾身の一撃。


 それを受けたP1は、


「ぬっ……げっ……ぐぅう――」


 思わず呻き声をあげてしまった。

 昇華されたミシャの邪は、P型センエース1号の魂魄に『歪んだ傷』をつける。

 P1の体表で、死の電流がバチバチと音をたてた。

 直後、P1の全身を襲う重度の倦怠感――


「ちぃ……余力を全部ぶつけてきたか……俺はゴミ箱じゃねぇっての……」


 気力を減らさぬよう、テキトーな事を口走ってから、


「つぅか、どいつもこいつも、聞いてねぇ自己紹介しやがって……ウザすぎるぜ……てか、なんだ、これ。どういうデバフだ……知らんぞ、こんな技……ぁあ、重てぇ……暗ぇ……これは……まさか、お前の闇……お前が背負ってきた重荷か……」


 ミシャンド/ラは、『産まれただけ』で『多くの命』を奪った。

 産声を上げただけで、邪神と呼ばれた。

 神々からも忌み嫌われ、

 全ての命から拒絶された。


 そんな彼女が背負っている荷物。

 1ミリも冗談ではすまない命のハンデ。


「気持ちの悪いもん、ぶつけてきやがって……ほんとうに、お前は嫌がらせの達人だな」


 その一部を押しつけられたP型センエースは、心底から不愉快そうに、

 精気を集中させて、払いのけようとする。

 そんなP型センエースの姿を見て、

 ミシャは言う。



「その重荷、セン様は背負ってくれたぞ……私ごとおぶってくれたんだ……その果てなき尊さで、私の邪を丸ごと飲み込んでくれた。わかるか、その覚悟が……貴様ごときに……わかるか……っ」



「知るかよ。どうでもいい……お前の面倒を背負ったら偉いのか? そうじゃねぇだろ。つぅか、お前、なに自慢げに『自分がいかにセンエースの御荷物か』を熱弁してんだ。バカじゃねぇの?」



 そこで、P型センエース1号は、目に込めた力を強くして、


「俺は、お前の面倒を背負っていない……だから、その分、俺はセンエースよりも軽い。重りがないぶん、はやく動ける。それだけなんだよ」



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