真のセンエースに、俺はなる!

真のセンエースに、俺はなる!



 『百済に属している者』に対して、『百済に属している者達』が思う事は、いつだって、非常にシンプル。

 あくまでも、あくまでも、『大好きな同じ会社』でたまたま一緒に働いている同僚。

 それだけ。

 それ以上でも、それ以下でもない。


 だが、ゆえに、『大好きな会社』に損害を出すやつの事は許さない。

 『IR3がやられた』という点に関しては、IR3の実力不足が原因という、個々の問題なので、なんとも思わない。

 いや、何とも思わないという事はない。

 『この程度の仕事くらい、サクっとこなしやがれ、ザコが』

 『努力不足』

 『ゼノリカを背負っているという自覚が足りない』

 とは思う。

 だが、そこまで。

 心配など、絶対にしない。

 百済は仲良し集団ではない。

 必要とあらば、『同僚だろうが上司だろうが関係なく無慈悲に処理する闇人形』の集団。


 だから、『IR3がやられた』という事に対しては怒っていない。

 ――ただ、『ゼノリカに属している者にキバを向けた』という点に関しては許せない。

 絶対に許さない。


「情報回収用に、脳だけ残して、それ以外はバラバラコースで」

「認識」

「火力担当は『UV6』一人で充分でしょ。私は、援護にまわるわ」


「別に構わない。『I5』もサポートにまわってくれ。あのカスを確実に殺す。それだけが今現状の全てだ。それさえ出来れば、それ以外はどうでもいい」

「了承。これより、粘帯滞(ねんたい)性の抹殺を開始する」

「普通の抹殺でいいでしょ。なんで、わざわざネバっこく殺す必要があるのよ」


「気がすまないからだろ」

「まさしく。UV6にデバフ系のアタックサポートを積みまくって、暴れさせて、苦しめて、苦しめて、殺す」

「感情だしすぎ。ふさわしくない。……事もないか。どこか、ある意味で、『私たち(百済)』らしい」


 この三人、のんきな会話をしているように見えて、実はバリバリにキレていた。

 ゼノリカにキバを向いた者に対する百済の怒りは底しれない。


 そんな三人の様子を黙って見ていたP型センエース1号は、


「いい殺意だ……それでいい……」


 舌なめずりをしながら、


「ここを乗り越えれば、俺はさらなる俺になれる。……お前らの武を学習すれば、『天上』の連中にも勝てるようになるだろう」


 すぅう、はぁああ、と深呼吸をはさんで、


「……全部飲み込んで、『果て』まで辿り着く。そして、必ず、センエースを殺す! そして! 俺が! 真のセンエースになるんだ!」




 ★




 『合同訓練(バトロワ)』直後で、瞑想休憩中の九華の面々は、穏やかに談笑をしていた。

 ここ最近のトレンドは、もっぱら、ジャミとバロールが受けた、『神の手ほどき』について。


 ジャミが、天を仰いで、恍惚の表情で言う。



「――そして、主は仰った。『汝(なんじ)の魂魄は、革命を望んでいる。受け止めてしんぜよう。さあ、くるがよい』と。その尊き御言葉が、『限界という名の壁際』で停滞していた私を開いたのだ」



 果てなき高次の指導。

 それによって開かれたジャミの華。


 何度話しても、飽き足らない。

 なんどでも、心が沸きあがる神の輝き、その無上なる尊さ。


「主は美しかった。途方もなく美しかった。無上の美。果てなき耀き。『この世の全て』に辿りつかれた命の神。あれほどの美しさを、私は他に知らない」


 ジャミがそう言うと、バロールも深く頷いた。

 二人の心を埋め尽くしている神の光。


(神の偉大さなど、言葉では分かるはずがない。触れなければ、あの『輝きの重さ』は理解できない。聖典には、そこが――距離が足りない。『神の遠さ』が書き切れていない。こうなったら、私が書くべきか……)




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