弟子にしてください。

弟子にしてください。



(最悪、それで勝てなかったとしても、フーマーまで誘き寄せてしまえば、神器を使って瞬殺できる)


 ホルスドから、アバターラについても、チラっとだけ聞いているが、


(やつらのトップの、アバターラとかいう『異界の神』も、しょせんは、従属神の方々に勝てるかどうかといったところ。凄まじい強さである事に違いはないが、その程度では、大いなる主の前だと、どうしようもない)


 メービーは、大いなる主とも、一度だけだが、会った事がある。

 『期待している』と一声かけられただけだが、あの覇気の重さは今でも覚えている。


(あの御方の強さは、間違いなく頂点にある。異世界の神がどんな軍勢を率いてこようと、あの御方には勝てる訳がない。つまり、世界は、実際のところ、危機になど陥ってはいないということ)


 それが、メービーの視点。

 メービーからしてみれば、エレガ・プラネタは、完全で最強の存在。


 あの御方がいる限り、世界に危機など訪れない。

 そう心の底から信じられる、絶対的な象徴。




「さて、他に、敗者復活を望む者はおらんか? おらんのなら、合格した連中どうよう、さっさと帰りなさい」




 『自信ありげで、かつ、気合いの入っていた6人』が秒殺されたことで、他の不合格者たちは、全員委縮してしまった。


 そんな状況を受けて、『1の紙を持っている者』たちは、『本当に、一次試験は終わったんだな』と理解したらしく、『もう既に用はない』とばかりに、ゾロゾロとこの場をあとにしていく。

 不合格を言い渡された者の大半も、『あのジジイは、おそらく、フーマーの上位者だろう』と、殺気の余波(余波の質にも気付けないレベルの者は、予選で落ちている)で気付き、今年の合格は諦めて、ポツポツと家路につきはじめた。


 ちなみに、ゼンたち一行は、敗者復活が始まった直後の段階で、『あ、これマジで一次試験終わっているパターンのやつだ』と理解し、とっとと帰っていた。



 今、まだホールに残っているのは、競馬場で例えた際の『自分の大敗が信じられず、呆(ほう)けてしまっているような者たち』が数名だけ。

 それか、不合格はしたものの、メービーの鋭い殺気に興味を持って、彼に話しかけるチャンスをうかがっている数名くらい。


 というか、実際に、勇気のある『不合格者A』が、メービーの元まで駆け寄って、


「ん? なんじゃ、敗者復活をうけるのか?」

「い、いえ、そうではなく……私をあなたの弟子にしていただけないでしょうか」


 そう懇願したが、


「私は弟子をとった事がない。弟子を育てる自信がないからではない。育てるに値する弟子に出会ってこなかったからじゃ。これまでの長い人生の中で、ぬしのように、弟子になりたいと言ってきたものは数え切れんほどいたが、私は誰一人、弟子にはせんかった。これが答えじゃ。それ以外を言う気はない。まだ、そこに立つというのなら、敗者復活を受ける気があると判断する」


「……っ……くっ」


 残念そうな顔をして、その場をさる不合格者A。



 ――そんな中、センは、


「さて、それじゃあ行ってくるか……うーん、しかし、三時間も立ってなくちゃいけないとは、しんどいねぇ……ふぁ~あ」


 ノビからのアクビをかましつつ立ちあがる。


「お前ら、帰っていていいぞ」


 言われて、シューリが、


「お兄が、三時間もの長い間、ちゃんと立っていられるか不安だから見守っていてあげまちゅ」


「お前はアレか? 俺を小馬鹿にし続けないと死んじゃう病気にかかっているのか? 大変だな」




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