ゼノリカとは?
ゼノリカとは?
「参加者が全員死んでしまったのなら、大会はこれで御開きね。まあ、こちらの部下は予選で落ちてしまったから、私には関係がない話だけれど」
至極のんびりと、そんな事をつぶやいた。
喧騒がピタリとやんだ。
誰もがミシャに視線をむけている。
誰もがこころの中で思う。
殺された参加者の中には、フーマーからの刺客も混ざっていた。
ならば、『こんな、イカれた真似』ができる者は限られる。
すなわち、焦点をあてるべきは、『可能』かどうかではない。
実行する勇気があるかどうか……
ピリつく空気。
張り詰めていく。
まるで、みなの心を代弁するように、ケイレーンが、
「君のしわざか。ドーラ嬢」
重たい声でそう尋ねた。
全員の耳がミシャの言葉を待っている。
「何を言っているのかわからないわね。私はずっとここにいたし、私の部下は、あの舞台で闘っていたわ」
そんな事は知っている。
だが、先ほどまで舞台に残っていた八名全員がレイモンドの関係者だという事はすでに予測がついている。
ならば、『他の部下』がこのスタジアム内に紛れ込んでいても不思議ではない。
モンジンたちの闘いを囮にして、その間に、他の面々を殺害した可能性は充分にある。
だが、目撃者が一人も残っておらず、何か証拠になるようなものも残っていない現状では、追求しようがない。
ミシャは、
「ただ、もし、その痛ましい事件が私の仕業なら、あなたたちは我々を、これまで以上に、強く警戒しなければいけないわね」
その発言を受けて、全員が理解した。
レイモンドが犯人であることは、最初から分かっていたから、それについての理解ではない。
レイモンドがハッキリと『宣戦布告』してきたという事を、この場にいる全員が理解したのだ。
あれほどの演舞が出来る者達だけではなく、他にも――それも、各国の代表が用意した『できる者たち』を、誰にも悟らせず皆殺しにできるほどの戦力を、レイモンドは保有している。
なんという脅威。
なんという悪意。
「君の言いたい事は分かった。よく分かった。本当に……よく……」
ケイレーンは、そうつぶやいてから、
「最後に一つ聞きたい。……『ゼノリカ』とは?」
その質問に、ミシャは、
「ゼノリカ? さあ、わからないわ」
とぼけてみせてから、妖艶な笑みを浮かべて、
「けど……とっても素敵な響き」
そうつぶやいた。
その言葉を最後に、ミシャは、VIPルームを後にする。
残された者達は、それぞれ、すぐに、今後の対処法について思案する。
ケイレーンが、セレーナに、
「他のピースメイカーに連絡をいれろ……レイモンドとは総力戦になる。それと、ラムドへの使者を出せ。魔王国とレイモンドが繋がっているかどうかの確認がとりたい。はぐらかすようなら、黒と認定すると伝えさせろ。急げ」
★
――レイモンド本社の地下。
『完全拘束されて転がっている16人』を見下ろしながら、
九華十傑の第十席・序列三位エキドナール・ドナが、
自身の隣で片膝をついているUV9に、
「たしか、回収予定者は35人(シード10名+予選から上がったもの25名)ではなかったか?」
「19名ほど、真正のカスが混ざっておりましたので、神法にのっとり、処理させていただきました」
内、一人を『伝令役(死に際に『ゼノリカ』と言わせた)』に使い、回収した16人分の死体はUV9が作成した。
『死体を作る』という一点だけで言えば、UV9はゼノリカ一と言っても過言ではない。
※ 『この上なく尊い神の王』がその気になれば、もちろん、UV9以上の死体を創造する事ができるので、本当にUV9がゼノリカ一ではないが。
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