ならし。
ならし。
ポォオっと、淡く光る、ミシャのダッフルコート。
すぐに、
「あ……ぁっ……」
「ほう……どうやら、レオンも、心底から、ミシャを愛しているらしい。『想い』が伝わってくる。強く、深く、そして、ズッシリと重たい……俺が創ったアイテムは、どうして、こう狂気的になっちまうのかねぇ……まったく」
苦笑いしながら、
そこで、センは、
ソっと、ミシャを抱きしめた。
「ひゃっ――せ、セン様っ」
「レオン、お前に、俺の神気を少し分けてやる」
センの腕の中で、レオンは、神々しい光に包まれた。
淡く、優しい、陽だまりのような輝き。
「これからも、ミシャを頼んだぞ、レオン」
返事をするように、強い神気を放つレオン。
それを見て、センは満足げに頷いてから、
ポーっとしているミシャの頭を、もう一度なでた。
(セン……様……っ)
限界に達していたと思っていた愛情が膨れ上がる。
ミシャの全てが、甘くとろける。
そんなミシャにゆっくりと背を向けるセン。
『三至に対する親としての役目は果たした』と判断したセンは、
威厳を感じさせる優雅な歩調で、アダムの目の前まで帰る。
『センに愛された余韻に浸っているミシャ』を、
『とんでもない目で睨みつけているアダム』に、
センは言う。
「あいつらに与えた究極超神器は、どれも、使いこむ事で真の効果が発揮する類のもの。逆に言えば、徹底的に使いこまなければ、ただのゴミ」
センの言葉でアダムは我にかえり、まっすぐな目でセンを見つめて、その玉音を拝聴する。
「……『センエースという神は、部下にゴミを配るクズだ』なんていう悪評がたつのを、お前は許せるか?」
「ありえません」
「なら、お前に命じよう。あいつらの『慣らし』につきあえ。究極超神器をフルで活用し続けなければ死んでしまうほどに追いこむんだ。実戦にまさる訓練は……あんまりない」
「すべて、主上様の望むままに」
命を受け、内容を真に理解すると同時、
アダムは、ニィっと笑い、ミシャに意味深な視線を送る。
余韻に浸ってポヤポヤ顔をしていたミシャだったが、そんなアダムの視線に気づいたと同時に、『女の顔』になって、グっと口角をあげた。
――『すべて、受けてたつ』という挑発的な返事。
ミシャとアダムの間に走っている電流や火花を横目に、
平とゾメガは、『とばっちりが酷そうだなぁ』と不安そうに溜息をついた。
そんな全員の様子を見て、
(まあ、色々、うまくおさまったかな……)
などと、若干見当違いな事を心の中でつぶやいて、
呑気にアクビをするセンだったが、
「っ!」
背中に『鋭い視線』を感じて、ビクっとする。
チラっと後方に視線を向けてみると、二人の女が立っていた。
一人は、キャビンアテンダント的な、装飾が華やかなスーツを纏う背の高い女で、
一人は、セーラー服的なスーツ(ていうか、ただの黒セーラー)を纏う細身の女。
そんな二人の鋭い視線を受けて、センは、こめかみに冷や汗を流した。
「そ、それじゃあ、俺はいく。期待しているから、がんばれ。以上」
そう言って、センは、無詠唱で転移の魔法を使い、自室として利用している『世界』へと帰った。
そこは、いつもの『輝く場所』。
淡い光で包まれた、幻想的な、煌めく雲の上。
天空を染めるのは、『怜悧』なインディゴブルー。
現実から『乖離』した楕円の虹が柔らかに揺らぐ。
そんな『センの世界』に戻ってきた直後、
CAスーツと黒セーラーの二人も、追いかけるようにして、この世界に帰ってきた。
と、同時に、
「ジーサマさぁ、急にいなくなるの、マジでやめてほしぃんすけど」
CAスーツで見た目は華やかで優雅なのに、少し粗野で気だるげな雰囲気が特徴的な美女。
――才藤麗理と、
「そーですよっ、おじいちゃまっ。探すの大変だったんですからねっ☆」
黒セーラーのシックでダークな感じとは真逆といってもいいキラキラ笑顔が特徴的な美女。
――異守界理。
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