ハズレ確定ガチャ

ハズレ確定ガチャ


 ゼンは、流れの中で、GPを確認する。

 ――『エグゾギアの改造』や『魔法の強化等』でちょっと使ってしまったため、

 多少減っているが、一応、まだ5000は残っている。



「3000ポイントでガチャ引いて、残りでステータスを上げる……それしかない」



 『素ガチャ』の初回値は1000だが、次値は3000。

 その次は1万と跳ねあがる。

 ご利用は計画的に。


「シグレの奇運がない状態だと、大したものは引けないかもしれないが……ここまで、異常なほど不運が続いているし……その辺とバランスを取って、大吉がくる可能性もなくはない……っ! 頼む……っ! 神様!」


 『神』に祈りながら、ゼンはガチャを引く。

 その結果は、






『熟練度E(最低値)のグリムアーツ【一閃】を会得しました。同機確認のため、テストプレイを行います』






 脳内に声が響いた直後、

 ゼンの体は、勝手に、



「一閃!」



 と叫びながら、剣(注文の多い多目的室)を振っていた。


 両手で剣を横薙ぎにする単純な剣技。



「え、なに、これ……ただ、剣を横に振るだけじゃん……」


 いや、違う。

 若干だが、剣を振った際に、衝撃波が出ている。


 斬撃を飛ばせるグリムアーツ『一閃』。

 ヘルズ覇鬼が使っていた『跳空斬』のグリムアーツ版。

 グリムアーツは、魔力を必要とせず、訓練しだいで、自由にスペックをカスタムできる技能。

 ランク魔法の場合は、『上昇率』・『限界値』・『スペックの上がり方』が先天的(うまれつき)に決まってしまうのだが、グリムアーツの場合は修行しだいで、自由自在(ランク魔法も、GPを使えば、多少はカスタムできるが、グリムアーツほど自由じゃない)。


 『ランク魔法・跳空斬』と『グリムアーツ・一閃』は、基礎性能は、ほぼ同じ(初期段階だと、一閃の方が遥かに性能は劣っているが、属性や現象などの基本的な性質は同じ)。


 『ちょっと訓練した程度の一閃』であれば、『跳空斬』を使った方がお手軽で強いのだが、キッチリと訓練を施した場合、かなりの時間はかかるものの、最終的には、跳空斬よりも、一閃の方が、遥かに高性能なスキルとなる。


 現状における一閃の『熟練度』は『E』なので、出ている衝撃波の威力はゴミ。

 飛ばせる斬撃の距離も、五センチほど。


 ちなみに、『一閃』は、究極超神センエースが、かなり若い時に会得したグリムアーツの一つ。



「え、マジでガチャの結果、これだけ? 『横切りが少し早くなりました』だけ? うそだろ?」



 ゼンが、困惑していると、頭の中に、『一閃』に関するデータが入ってきた。


 ――自分の名字が入っている必殺技の名前を叫びながら使用する事で、斬撃が飛ぶようになるというアリア・ギアスが積まれたグリムアーツ。

 ――熟練度『E』は、『型』を覚えているだけの状態なので、威力はカス。

 ――『衝撃波を出せるほどのグリムアーツ』は、『型を覚えるだけ』でも数カ月は必要なので、たったの3000GPで会得できたのは、かなりの当たりと言えるだろう。


「いや、かんっぜんに、ハズレだろう! なにが、『かなりの当たりと言えるだろう』だっ! ふざけんな!」


 一閃に関するデータを把握したゼンは、頭をかきむしりながら、


「ウソだろぉお! 3000も払って、こんなゴミ(訓練が足りていないグリムアーツ)引くかね! いらん、いらん! 引き直しを要求する!」


 当然だが、数真は、うんともスンとも言わず、

 次の10秒経過で、またバスターデーモンが出現する。



 ※ ちなみに、本来、GPでグリムアーツの取得など出来ない。

 グリムアーツは『熟練度最低』であろうとなんであろうと、きちんと修行を重ねなければ会得不可能。

 今回、『ゼンが一閃を会得した』という現象は、

 究極超神センエースが『色々』やった結果。


 すなわち、センとゼンでなければ絶対に成立しない裏技である。


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