ハイドラ・エグゾギア‐システム。

ハイドラ・エグゾギア‐システム。



 気付いた時、セイバーリッチは、穢れた翡翠のオーラを放つ禍々しい外骨格で包まれていた。


 その外殻は、『嵐を想起させる奇形の蛇』を『生きたまま分解・マシン化し、そのパーツで組み立てたような全身鎧』といった様相の、歪がすぎる伏素カイゾロイド魔動アクチュエータの集合体。

 接続部は絶えず発光・脈動していて、たまにプシューっと煙を吐いている。


 『膨大な量のフッキ鉱』が注がれており、『CPUにセイバーリッチ』が起用されているという、暴力のバーゲンセール。

 その両手には、セイバーリッチが召喚できる特別製のデスサイズと聖剣。



 セイバーリッチのサイズに合わせて、コンパクト化されているため、全長は『3メートルほど』と、ゴーレムの時より小さくなったが、威圧感は遥かに増している。


 全てが最適化されている、殺戮という概念の結晶。


 ――そんなおぞましい狂気的な姿を見て、センは、




(ゼンのサブシステムとして使えそうだな)




 心底嬉しそうにニッコリほほ笑んで、




(デフォでエグゾギアまで積んでいるとは、これ以上ない強化パーツ。おまけに、ゼンのアスラ・エグゾギアと、いい感じでバランスが取れているじゃねぇか。セイバーリッチごと奪って、そのままドッキングさせるだけでも、かなり強化できそうだ。もちろん、微調整は必要だが、その辺はゼンの仕事だ。任せるのがスジ……正直、ちょっとやりたいけど……まあ、そこは任せるさ)



 心の中でぶつぶつと、


(ハイドラとセイバーリッチ……悪くないビルドだから、組み合わせはそのままでもいいが、セイバーリッチが無強化なのはお粗末がすぎる。そこぐらいは、俺の方で手を加えておくか。サイクル強化用に、リソース生成率をあげたいな……となると、二択だな。……ミラーシュ化かナイトメア化……んー、まあ……RC低下率を上げておきたいから、ミラーシュかな。『セイバーリッチ・ミラージュ』がCPUのハイドラ・エグゾギアとドッキングしたアスラ・エグゾギア……いいねぇ)



 より凶悪なフォルムとなった殺神機を妄想していると、



『行くぞ、神の王を騙るクソバカ野郎。これぞ、これこそが本物の……神の王の力だぁあ!』



 フッキが突っ込んできた。

 ――なので、



「……『お前の部分』が邪魔だなぁ……どう消すかなぁ……」


 ヒョイっと楽に避けて、


[ふぶはぁっ!]

『ぬぼぉお!』


 サラっとクロスカウンターを決めておく。

 まるで、『腕を振り回すだけの素人』と遊ぶプロボクサー。


 『フッキ鉱増し増しのハイドラ・エグゾギアを駆るセイバーリッチ』は、間違いなく凶悪なスペックを誇る――が、


[ぅ……ぬぐぅ……]

『ぐ……ぬぁああ……がはっ……は、ぁ?』


 膝から崩れ落ちるガラクタを見下ろし、センは、


「インテリジェンス化は、キチンと機能すれば諸々ボーナスがついて大きなプラスになるし、単純に貴重だから、できれば消したくはない……が、今のままじゃ、マイナスにしかならない。うーむ、どうすっかねぇ……」


 二秒ほど悩んでから、


「そうだな……一回くらいチャンスをやるか……うむ。じゃあ、これから、ちぃとテストしよう。俺の目に適えば残してやる。だが、もし、どうしても矯正できないと判断できたその時はサクっとデリートさせてもらう。俺のビルドにノイズはいらない」


 などと言っているセンの言葉など耳に入っていないようで、ガラクタは、


『ぁ、ありえない……なぜ、俺は膝をついている……俺の方が……存在値は上だぞ……』


 『疑問符の海』にブクブクと溺れていた。


 そんなガタクタの言葉に、センは答える。



「確かにお前の方が数値は上だな」



『そうだ! 俺の方が強い! 俺は最強! 真理を体現する最果て! 俺が負ける訳がない!』


 ガラクタは、よろけながら立ちあがって、


『こんな無様……俺が晒し続けるわけにはいかないんだよぉ! 俺は最強なんだ! 俺こそが、真理そのものなんだよぉおおおお!』

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