あの神様はきっと、

あの神様はきっと、







「五神ねぇ……それ、なんなの? よくわかんないから、教えてくれない?」


「この世界の支配者を飾る宝石!! 全てを統べる者の右腕!! 私を殺せば、主が黙っていないぞぉおお! 主は貴様よりも強い! 分かったな! 分かったら、手を離せぇえええ!」


「その主を裏切って俺につくって話をしていなかったっけ?」


「そうだ! 裏切ってやる! だから、離せぇ! 何度も言わせるなぁ! 痛いんだよ、くそがぁああああ!!」


「主は俺より強い……なのに裏切る? なんていうか、支離滅裂だな……そうでもないか? 俺を騙そうとしているけど、あまりの痛みから本音が漏れでてしまっている……単純に、それだけの話か」


 テレビでやっていた人狼ゲームで、追いつめられた『裏切り者(占い騙り中)』が焦って、矛盾した発言をして自爆するシーン。

 と、目の前のホルスドがかぶって、ゼンは少しだけ笑った。


「ちなみに、聞きたいんだけど……お前の主は、本当に俺より強いのか?」


「当たり前だ! 主は強い! この私ですら手も足もでなかった! ゆえに私は、神でありながら、主の配下になったのだ! 主は無敵! 最強! その主に、私は愛されている! 私を殺せば、貴様は主の怒りを買う!! だから、私を殺すなぁ! いいなぁ!」




「よく見ろ」




 そこで、ゼンは、UFオーラを調節し、ホルスドの目にだけ、己の真の力が見えるようにしてから、




「本当に、その主ってヤツは……俺よりも強いのか?」




「……っ……っ……っっっっっっ!!!」


 ゼンの力、その膨大なオーラを目の当たりにしたホルスドは、目と口を限界まで見開いたままの姿勢で固まった。


 二度ほど口をパクパクさせて、


 そして、ゆっくりと首を横に振る。


 別に、ゼンの言葉を否定している訳ではない。


 ただ、子供が、『イヤイヤ』をするように、勝手に首が動いている。


 つまりは、ただの拒絶。


 ありえない『力』に対する絶望が、ホルスドの首を動かしている。

 それだけ。





「なあ、ホルスド。さすがにないだろ? いくらなんでも、それは無いよな? 俺、攻撃力、190億とかだぞ? その主ってやつの力が、お前より一万倍強かったとしても、俺の力には、まだ一万倍足りないんだぞ?」






「ぉま……ぁ……な、なに……もの……」



「俺? ああ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は、本物の神様から、このバグったようなチートをもらった男子中学生……名前はゼンだ。よろしく」


「……本物の……神……」


「今、ハッキリと分かった。ウチの神様が本物で、お前らの主は、ただの偽物……まあ、この世界の一般的な連中と比べれば、お前は別格だから、その主ってやつも、相当な化け物なんだろうけど……ウチの神様と比べれば、ゴミなんだろう……それとも、俺が強くなりすぎただけで、実は、俺、すでに、あの神様より強い?」


 言ってみたものの、ゼンは、すぐに首を横に振って、


「……いや、たぶん違うな……」


 なんとなく、『違う』と思った。

 根拠はない。

 ただ、違うと分かる。

 不思議な感覚だった。


 きっと、

 あの神様は、


 今の自分よりも、


 『これほどの力を得た自分』よりも、






 ――もっと、もっと、もっと、果てなく遠い場所にいる――






「となると、『超魔王軍』も……そういう『領域』だと考えておいた方がいいんだろうな……すげぇな。はは……ゼノリカだっけ? 今の俺よりも遥かな高みにいる神様に鍛えられ、認められた奴3体がトップを張っている組織……どうやら、想像していたよりも、遥かにすげぇ組織だったみたいだな、超魔王軍ゼノリカ……ぁあ、すげぇ、ほんとうにすげぇ……」



 ラスボスを頭に描いてみて、魂が震えた。


 これだけの、イカれた力を得て、なお、自分はまだ、スタート地点にいるという異常な事実。


 その幸福。


 その至福。



 終わりなき旅路。

 果てなき未来。



 広がっていく!

 世界が!

 全てが!



 これまででも大概だったのに!


 まだ、行く!

 全然止まってくれねぇ!


 そうだ!



 もっと、もっと、もっと、





 もっと!!



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