究極超神センエース

究極超神センエース




「ははははは! どういう原理だ?! なんだ、これ! 死ぬ前より遥かに強くなっているぞ! この力、貴様と同じ! 同じだ!! ふははははははははははは!! 今度こそ、私は完全な存在になったぁあああ!! はぁーーーーーー!!」


 喜びを爆発させているサイケルをシカトして、

 センは、『サイケルの奥』にいる、己の配下に意識を向けて、


(……すげぇな、アダム……)


 絶賛した。

 思わず微笑みながら、センは、心の中で、


(俺の無限転生を媒体にしただけでは、サイも、ここまで無茶な事にはならなかった。ほとんどがお前の力だ。アダム。お前が積み重ねてきた全て……とくと見せてもらったぞ……流石に、絶死のアリア・ギアスによるデスブーストには抵抗しきれなかったようだが、それは仕方な――)



「どうだ! あるか?! 今の私を殺し切る手が! 私を倒す手が、貴様にあるか!!」



(うるせぇなぁ……お前なんかどうでもいいんだよ……)


 センはやれやれと溜息をつきながら、心の中でつぶやく。


(お前を倒す手段? あるさ……アダムを奪い返せばいい。そうすれば、テメェは、死なないだけのカスになる。後は、ボコボコにしてキューブ系の魔法で肉体ごとコアオーラを封じこんで終了だ。殺せはしないが、お前の生死なんか、どうでもいい。何もできない世界で永遠に生きていやがれ)


 ゆえに、問題は……


(……問題は、どうやってアダムを奪い返すか……絶死のアリア・ギアスと、俺の無限転生が組み込まれたせいで、ようやく解けかけていたアダムのコアオーラがまた絡んじまった……)


 センは、深く、静かに、息を吸い込む。


 酸素を取り込んで、二酸化炭素を吐きだす。

 その過程は何も変わらない(変えなかったと言った方が正しいが)。

 もちろん、部分部分では違うが、概ねの流れは変わらない。


 センは二度ほど深呼吸をする。




 ――正直言って、ここまでは余裕があった。




 アダムを救うために、もちろん、ずっと全力を尽くしてはいたが、

 ここまでは、『方法ならいくらでもある』という、心の余裕があった。


 けれど、ここからは違う。


 唯一の最善手のみを打つ。


(存在値は同等。戦闘力は俺の方が遥かに上だが、やつには無限蘇生というアドバンテージがある。この状況下で……ギリギリまで削る……)



 スゥゥゥ。


 ハァァァ。


 センは、本気で集中する。


 目を閉じて、再度深呼吸。


 心が整っていく。



(復唱。ヤツの心を削りきる。そして、アダムを奪い返す)



 センは、バっと目を開けて、






「――ミッション、了解」






 己に課せられた責任を、

 理解して、認める。



 『死なないカンスト(サイケル)』の心を殺す。

 恐ろしいほどの高難易度。



 センは思う。

 コレは、他の誰にもできない事。



 実現可能なのは、この世でただ一人。



「存在値17兆。全世界最強の神。くだらない称号だ……しかし」



 センは構える。


 大きく足をあげて、虚空に、回転蹴りを放つ。

 攻撃ではない。

 手を合わすのと同じ。

 単なる、本気で闘う前のルーティン。


 シュンシュンと、二度ほど空に蹴りを放ち、

 右腕で下弦を、左腕で上弦を描く。


 しっかりと体をほぐしてから、

 ダ、ダンッッ! と両足で地面を踏みしめて、グっと腰を入れる。



「……バカみたいに積み上げてきて、本当に良かった」



 心から思う。


 神の領域に至ってから、『力』は、ただ無意味に膨れ上がるばかりだった。


 現世で、『誰かを救うための力』など、存在値1000もあれば充分だった。


 それ以上は、いつだって、ただの数字でしかなかった。




 存在値17兆。

 現世では、なんの意味もなかった数字が、今、初めて、


 ――センの『力』になる。






「はぁぁぁああ……」






 フツフツと、センのオーラが沸きあがっていく。






「――究極超神化3――」






 磨き上げられた、淀みのないオーラで包まれる。

 膨大なエネルギー。

 呆れるほど大きくて、どこかせつない。



 それを見たサイケルは、



「……この領域に至ったからこそ分かる。貴様は本物だ。その、途方もない力。だが、私には勝てない。なぜならば、私は死なないから」


 少しも焦らず、ドッシリと落ちついて、そう言った。


 サイケルは、


「私は必ず貴様を殺す。きっと、それで全てが終わる。貴様を殺した後も、私の命は続いていくだろう……が、そこから先は、ただの惰性。貴様を殺し、『最強という概念そのもの』が『完成』し……そして、全てが終わる。儚いな。しかし、それでいい……私はそのために産まれてきたのだろう」


 まっすぐな目で、センを見つめて問いかける。


「最後だ。どうか、教えてくれ。私の『前』に立つ者よ。――貴様の名は?」



 その純粋な眼差しに、センは応えた。



 真剣なまなざしで、わずかもおどけることなく、


 慰めの『弱い言葉』すら使わず、


 堂々と、本気の名乗りをあげる。






「俺は究極超神の序列一位。神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。


 ――舞い散る閃光、センエース」






 先手、センエース。

  盤上に、躊躇なく、

   『神の一手』を放つ。

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