第二十七話 破戒
その刹那。
わたしの体の中に、燃え上がるような何かがふつふつと湧き上がるのを感じる。
おそらく、「ライジング」によって産生された魔力であろう。
それと同時に目の前に迫る脅威がゆっくりと感じられる。
……これなら。
わたしは、思いっきり叫んだ。
「シャドー!」
わたしを影が包み込み、あっという間にその場から逃れ。
空気を切り裂くような、震わせるような、凄まじい轟音、衝撃波を尻目に、一気に母様へ詰め寄る。
莫大な魔力を使った直後だからか、母様はとっさに反応できていないように見える。
今しかない。
母様を止めるには、今しか……!
もう、全力で行くしかない。
次々と魔力が作られるのを感じるが、どんどん体の力が抜けていくように感じる。
まさに、火事場の馬鹿力だ。
人間は、疲れてしまうからか、普段持てる力のほんの少ししか使わないらしい。
それを一気に開放するのだから、体への負担は尋常じゃない。
「シャドー!」
再び影を母様に放つ。
先ほどよりも巨大な影が母様を襲い掛かる。
まるで、大蛇が獲物を丸呑みしに行くかのよう。
普段はここまで巨大な力は発揮しないから、「ライジング」の恩恵だ。
「フォトン・ブラスター」
母様は光の大砲を放つ。
「ライジング」を使ってもないのに、わたしの魔法と同じような威力。
その二つが衝突する。
その瞬間、凄まじい音と、衝撃波が辺りを駆け巡る。
しかし、二つとも拮抗していて、わたしはそれを維持するのがやっとだ。
少しでも気を抜いたら、あっという間に餌食になってしまうだろう。
そうしている間にも、体はどんどん消耗していく。
……早くけりをつけないと、こちらがやられてしまう。
それは、もう母様を止めるすべがないということだ。
そのまま、母様はあらゆる人を殺し、自分の体が壊れるまで止まらないはずだ。
まさに、神の祟りといったところだ。
そんなことはさせない。
「シャドー!」
わたしは打ち合うのをやめ、母様の魔法の軌道から離れる。
それと同時に、魔力を集める。
全力で。
わたしが持てるすべての力をぶつける。
背後からは、母様の魔法が着弾したことによる衝撃波、轟音が伝わってくる。
母様の魔力は、まだ尽きそうにない。
ここでやらないと、もう二度と……。
でも、わたしが止める!
わたしは母様に向き直り。
黒魔法最強の魔法を放った。
「ナイトメア・ブレイカー!!」
その瞬間、数多の影の大砲が母様に襲い掛かる。
それは、先ほどの母様の魔法よりも強大で。
数百メートルほどの大きさだった。
「ネヴァー・ブレイキング・シールド」
母様も、必死に防御する。
その盾は、わたしの全力を受け止める。
一瞬の膠着。
でも、これが続くと、それこそすべての終わりだ。
もう、気合で破るしかない。
「いっけー!!」
気づくと、必死に叫んでいた。
体の底から。
体が熱い。
魔力がもっと強くなるのがわかる。
次の瞬間。
強烈なまでの衝撃が起こる。
これまで聞いたことのないような爆発音がする。
……母様の防御が。
破れたのだ。
そして、母様は、影の大砲の中に消えていった。
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