これからもずっと、永遠に

第86話 俺の物語は救われたらしい

「さっぶ」


季節は巡って、今は冬。

それもクリスマスだ。


「あなた、イルミネーション見に来て、その感想は間違ってると思うの」

「だって冬だぜ? 寒いだろ」


当たり前のことである。


「ほら見ろ、雪が降ってきたぞ」


空から白い粉雪が、しんしんと降ってきた。

盛り上がる周りのカップル。

でも、この2人は違った。


「馬鹿だろ、なんで夏は暑くて、冬は寒いんだよ!」

「恥ずかしいから、そんなに騒がないで」


男の方は、気温にブチ切れ。

女の方は、冷めきっている。


「せっかく2人で来たんだから、もう少し雰囲気を楽しもうよ」

「お? 寒くても私たちは熱々ですってか」


頭をバシッと叩かれた。

この痛みですら、幸せに感じる。


「手、出して」

「憧れるやつね、誰しもが1回は」


手を繋げば、どんなに寒くても暖かくなる。

それは本当だったようだ。


「少しはましになったでしょ?」

「ましどころか、むしろポカポカだよ」


今日ぐらいは惚気けてもいいだろう。

だってこんな可愛い彼女がいるんだから。


「どうしたの?」

「いや別に? 可愛いなって」

「なっ」


こんな風にすぐに顔が赤くなる。

わかりやすくて、ありがたい。


「ほ、ほら! 見て」

「はぇー、でっかい」


目の前に広がるのは、煌びやかに装飾された大きいクリスマスツリー。

なんともカップルが多いこと。

俺たちもその内の一組だけどな。


「·····来年も来ような」

「来年だけ?」

「これからもずっと、永遠に」


2人は手を強く握りあった。

白雪の元に永遠を誓って──。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

被害妄想激しい系の彼女はいかがですか? 紅月茜 @kyetalk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ