第79話 大人への階段
「反省してるの?」
「「はい」」
家に帰ると、小倉からの説教が始まった。
もう60を超えた爺さんの正座は、中々に情けなかった。
「一応言い訳をしておくと、俺は警備をしようとしていた」
「わしは点検を·····」
「この期に及んでよくそんなこと言えたわね」
最後の最後まで言い訳をする爺さん。
本当に情けない。
「てかなんで、あんたみたいな人が民泊なんて許されてるの?」
純粋な疑問。
普通に考えたらアウトだろう。
「それは10年前に遡る·····」
それは変態爺さんが50歳の頃。
あの頃は、嫁も娘も居た。
娘は丁度、高校二年生で友達を泊まりに来させることがよくあった。
本の出来心だった。
「サプライズじゃ·····」
娘の友達の誕生日だと言うことで、お風呂にケーキを持って行こうと考えた。
常人では理解が出来ない。
本人は、「油断しきっている時に行きたかった」と言っていた。
「いえーい! お誕生日おめでとう!」
男だもん、そういう気持ちはいつも抱えてる。
きっとそれを見抜かれたのだろう。
「気持ちわる、さっさと消えてくれない?」
「·····え?」
これが娘との最後の言葉、次の日に嫁と娘はどこかへ行ってしまった。
このことがきっかけで、煩悩が爆発。
どうせなら自分から覗いてやろうと。
「話が違うじゃないか·····」
今年まで、ずっと男子しか来なかった。
だから色々と爆発したらしい。
「許されてるというか、今年が初めての覗きじゃねぇか」
「本当に最低ね·····」
多分、来年からは消えるだろう。
「そんで娘と嫁から逃げられるってギャグじゃん」
「自業自得ね」
「小倉さんが娘と重なってしまったんじゃ·····」
理由が理由だ。
許されるわけない。
「私たちが泊まっている間は、二度と入ってこないで」
「そんなら黙っててやるからさ」
脅迫をすることで、爺さんの動きを封じた。
爺さんは足早に去っていった。
「次はあなたね·····」
「許してくれよ、本当に警備はしようと思ったんだよ·····」
半分は嘘じゃない。
後半は、乗ってしまったが。
「·····まぁ良いわ」
「まじ? やったー!」
出会った頃と比べて、だいぶ丸くなったな。
「あなたは悪気を持って、そんな事をする人じゃないのは知っているから」
あれ? よく見ると湯上りで可愛くね?
パジャマも女子っぽいし。
「もう寝るか、色々と疲れたわ」
「でも·····、布団、1セットしか無いわよ」
「あぁ! 忘れてた」
部屋の真ん中に、敷いてある布団を挟んで、目を合わせた。
「俺は布団なくても良いよ」
「そ、そうは行かないわ」
「·····何が言いたい」
小倉は顔を真っ赤にしてこう言った。
「2人で使うのよ·····」
お父さん、お母さん、今日僕は大人になります。
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